メールマガジン「Nutrition News」 Vol.162
第19回ダノン健康栄養フォーラムより
 学童期・思春期の食生活と心の健康
 女子栄養大学 栄養学部 専任講師
 衛藤 久美 先生

 学童期・思春期は成長期であり、身体や運動機能だけでなく精神面も発達していく時期です。一方で、依存心と自立心との葛藤が生まれ、反抗期を迎える子どもも少なくありません。子どもの内面が結果として様々な行動や身体的な訴えとして表れる場合もあるため、子どもの心の健康は、精神面だけではなく、身体的健康状態や行動面もあわせて、多面的に捉える必要があります。

 また、学童期・思春期は、心身の発達や生活スタイルの変化に伴って食生活が乱れやすくなる時期である一方で、食行動の傾向が決まる時期でもあります。この時期にどのような食生活を送り、どのような食習慣を身に付けるかが、成人期以降の食習慣にも大きく影響を与えると言われています。

 学童期・思春期には、食生活上の課題が数多くありますが、中でも心の健康に関連するという研究結果が得られている主な食生活要因として、「朝食」「間食・夜食」「共食」が挙げられます。

子どもの心の健康に関連する食生活要因

①朝食

 埼玉県坂戸市の小・中学生を対象とした調査では、小学生・中学生ともに朝食を毎日食べる子どもは、欠食することがある子どもに比べて、“集中したり、すばやく考えたりできないこと”を感じる者の割合が低いという結果が得られています。同様に、朝食で主食・主菜・副菜すべてを毎日食べている子どもは、そうでない子どもに比べて“集中したり、すばやく考えたりできないこと”を感じる者の割合が低いという結果が得られています。「集中力」以外にも「疲労感」「忍耐力」などの項目においても同様の傾向が見られたことから、朝食を毎日食べることだけでなく、バランスの良い朝食を食べることも、心の健康に関連しているということが示唆されています。

 

②間食・夜食
 中学生を対象に、「だるい」「眠たい」などの自覚症状の数と間食・夜食摂取との関連を検討した調査では、自覚症状の数が少ないグループにおいて間食の摂取頻度が低いという結果が得られています。同様に、自覚症状数が少ない子どもの方が就寝前の間食・夜食の頻度が低いという結果が得られていることから、子どもの心の健康は、間食や夜食の摂取とも関連していると考えられます。

 

③共食
 次にご紹介するのは、国内で行われた研究を対象に、共食行動と健康・栄養状態、食物・栄養摂取との関連を検討した文献をレビューした研究です。採択された論文20件のうち、子どもを対象にしたものは14件、成人を対象にしたものは6件で、子ども対象の検討がより多くなされていました。共食行動との関連を検討していた主な要因としては「体格」「精神的健康状態」「食事内容」「食事の質」「食品摂取頻度」がありましたが、中でも「精神的健康状態」は20件中7件と特に多く検討されており、うち6件で統計的に有意な関連が報告されていました。さらに、そのうち5件は、小・中学生の子どもを対象としたものでした。

 それらの論文から分かることは、子どもの良好な心の健康状態は、家族と一緒に食べる「共食」とは正の関連があり、子どもが一人で食事をする「孤食」とは負の関連があるということです。共食の頻度が高い子どもほど心の健康状態が良く、孤食の頻度が高い子どもほど心の健康状態が良くないという関連が示されています。

 しかし、単に家族と一緒に食事をすれば良いというわけでもありません。家族一緒の食卓が安らぎの場となっているかどうかでグループ分けをして、心の健康との関連を検討した研究では、「安らぎの場である」と回答した中学生は、そうではない者に比べて「イライラ感」「根気のなさ」「登校忌避感」を感じる者の割合が低いという結果が得られています。家族と一緒に食べていても、食卓の雰囲気が安らぎの場となっているか否かが、子どもの心の健康にも関連していることが分かります。

 

 子どもの心の健康に関わる要因は多数あり、且つ複雑に絡んでいます。中でも、食生活については、「朝食を毎日食べること」「バランスの良い朝食を食べること」「間食や夜食の摂食頻度が少ないこと」「共食の頻度が高く、孤食の頻度が低いこと」などの要因が心の健康に関わっていることが様々な研究から示されています。食事は栄養摂取だけでなく心の安らぎを感じることができる場であり、心の健康との関連も大きいことを踏まえ、家庭や地域において、安らぎを与え心地良さを感じるような食事の場となるように配慮することが、成長期の子どもの心の健康の維持・向上につながるのではないでしょうか。

こちらの講演ダイジェストをご覧になりたい方は、こちらからご覧ください。

▽第19回ダノン健康栄養フォーラムの概要は、以下をご覧ください↓
 ┗ http://www.danone-institute.or.jp/forum/pastforum/4044.html
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