メールマガジン「Nutrition News」 Vol.174
「高齢者の筋肉量の実態は? ―平成29年国民健康・栄養調査結果の概要より―」
 平成30年9月、厚生労働省は平成29年に実施した国民健康・栄養調査結果の概要を公表しました。今回の調査では、毎年実施されている基本項目に加えて「高齢者の健康・生活習慣の状況」が重点項目とされ、初めて高齢者の筋肉量や生活の様子についての把握が行われました。

栄養素等の摂取状況

 エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物の摂取量では、エネルギーとたんぱく質について、男女とも60歳代が最も高いという結果でした(図1)。

図1 エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物摂取量の平均値

平成29年国民健康栄養調査結果をもとに作成

 たんぱく質の摂取源では、年齢が高いほど肉類からの摂取割合が低く、魚介類からの摂取割合が高い傾向がありました。
 また、脂肪エネルギー比率は年齢が高いほど低い一方で、炭水化物エネルギー比率は年齢が高いほど高い傾向がありました。

体格の状況

 健康日本21(第二次)では、要介護や総死亡リスクが有意に高くなるBMI20以下を「低栄養傾向」の基準としています。今回の調査では、65歳以上で低栄養傾向にある人の割合は男性12.5%、女性19.6%でした。80歳以上では、男女とも約2割が低栄養傾向にありました。

 筋肉量については、四肢除脂肪量(kg)/身長(m)2で求められる骨格筋指数(skeletal muscle mass index : SMI)を指標として調査が行われました。SMIの平均値は、男性7.7、女性6.5で、男女とも年齢が高いほど有意に減少していました。サルコペニアの評価方法やカットオフ値(病態識別値)は定まっていません。そのため、今回の調査と同種の機器を用いたYamada. Yらの論文におけるサルコペニアのカットオフ値(男性:SMI6.8未満、女性:SMI5.7未満)と比較したところ、このカットオフ値に該当する割合は、60~64歳では男性1.4%、女性1.1%であったのに対し、65~74歳では男性10.1%、女性4.2%、75歳以上では男性28.8%、女性14.4%でした。

SMIの平均値は男女ともたんぱく質の摂取量が多いほど有意に高く、同様に、男女とも肉体労働をしている時間が長いほど有意に高くなっていました。なお、たんぱく質摂取量を上位群、中位群、下位群の3群に分け、肉体労働をしている時間別にSMIの平均値を比較したところ、たんぱく質摂取量が多く、肉体労働をしている時間が長いほどSMIが有意に高くなっていました。

  • ※ Int J Environ Res Public Health. 2017 Jul 19;14(7)

生活の様子

 今回の調査では、「週に1回以上は外出している」「椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっている」「日用品の買い物をしている」「食事の準備をしている」「お茶や汁物等でむせることがない」の5つの項目から高齢者の生活の様子の把握を行っています。その結果、女性では全ての項目、男性では「椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっている」「日用品の買い物をしている」の2項目において、該当する割合が65~74歳に比べて75歳以上で有意に低くなっていました。また、週に1回以上の外出の有無と低栄養傾向を比較したところ、男性では年齢階級に関係なく、外出していない人では外出している人に比べて低栄養傾向にある人の割合が高くなっていました(図2)。


図2 週に1回以上の外出の有無と低栄養傾向にある人の割合


平成29年国民健康栄養調査結果をもとに作成

歯・口腔の健康

 「何でもかんで食べることができる」人の割合及び、歯が20歯以上ある人の割合は、いずれも60歳代から大きく減少していました(図3)。

図3 「何でもかんで食べることができる」人と歯の保有状況(男女計)

平成29年国民健康栄養調査結果をもとに作成

 また、65歳以上の高齢者では、男女とも、年齢階級にかかわらず「何でもかんで食べることができる」人の方がそうでない人に比べて低栄養傾向に該当する割合が低くなっていました。一方で、その割合の差は女性より男性の方が大きくなっていました。
 これらの結果を受け、厚生労働省は高齢者の健康づくりについて、食事や身体活動に加えて、生活状況も踏まえた視点が重要であるとしています。

 

詳細は下記をご参照下さい。

平成29年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html

 

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