メールマガジン「Nutrition News」 Vol.178
「中年期のHDLがその後の認知機能に影響する!?」
 近年、人口の高齢化に伴い、認知症の患者数も増加しています。平成27年の厚生労働省の発表によると、2025年には、認知症の患者数は約700万人と推計され、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症患者となることが見込まれています。認知症患者の増加への対応は喫緊の課題となっています。

 そのような中、平成31年1月、国立がん研究センターの研究チームが、中年期のHDLコレステロールがその後の認知機能に関連する可能性を示す研究結果を発表しました(Translational Psychiatry 2019年1月)。

認知症早期発見の予測マーカーとして注目されるHDL

 海外のある研究によると、認知症の3分の1はその危険因子を取り除くことで予防できるとされており、軽度認知障害(正常と認知症の中間の状態)や認知症の早期発見によって予防につなげることが重要と考えられています。また、複数の海外の研究において、HDLコレステロールが高いと軽度認知障害や認知症のリスクが低下されることが報告され、早期発見のためのマーカーとして注目されています。しかし、これらの研究の多くは高齢期のデータを用いたものであり、結果が一致していませんでした。

 そこで、国立がん研究センターの研究チームは、一定の条件に合致する1,114人のデータに基づき、中年期のHDLコレステロールが、その後の認知機能に影響を与えるかどうかを調べました。なお、1,114人の対象者のうち、軽度認知障害と診断されたのは386人、認知症と診断されたのは53人でした。

HDLが高いグループでは、軽度認知障害・認知症のリスクが低下

 対象者の血中HDLコレステロール濃度を低い順に4つのグループ(Q1、Q2、Q3、Q4)に分け、最も低いグループ(Q1)を基準として、他のグループの軽度認知障害のリスクを比較しました。認知症については、診断された数が少なかったため、Q1を基準としQ2-4をまとめたグループのリスクとの比較を行いました。なお、分析にあたっては、飲酒や喫煙など、認知症発症に影響を与えるその他の要因が結果に影響しないよう、統計学的に調整を行っています。

 その結果、基準(Q1)のリスクを1とした場合、血中HDLコレステロール濃度が一番高いグループ(Q4)の軽度認知障害のリスクは0.47(53%低下)でした。また、認知症については、基準(Q1)のリスクを1とした場合、基準以外のグループ(Q2-4)のリスクは0.37(63%低下)でした。

図 HDLコレステロールと軽度認知障害、認知症

 国立がん研究センターによる多目的コホート研究HPより


 この結果から、HDLコレステロールの低い人がHDLコレステロールを高くする生活を行うことで、認知症の予防につながる可能性があることが示唆されました。

早いうちからの健康づくりの重要性

 研究チームは、今回の研究について、一度の検査で認知機能を評価していることから「今後は、中年期のHDLコレステロールが、軽度認知障害や認知症の進行についてどのように関わるかを明らかにする研究が必要」としています。しかし、中年期のHDLコレステロールが約20年後の認知機能に影響を与えることを示す今回の研究結果は、早いうちからの健康づくりの重要性を示すとともに、認知症を予防したいと考える人を始めとし、多くの人にとって健康づくりのモチベーションにもなり得るかもしれません。

【参考】HDLコレステロールを高くするためには…?
① HDLコレステロールを高める生活を行う(習慣的な運動、禁煙 等)
② 中性脂肪の高値を改善する(過食の防止、アルコールの制限、習慣的な運動 等)

研究結果の詳細は下記をご参照下さい。

多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告「血中HDLと軽度認知障害・認知症との関連」
(国立研究開発法人国立がん研究センター)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8235.html

 

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