「令和6年スタートの健康日本21(第三次)、その内容は?(2)」
令和5年5月、厚生労働省は、令和6年度から始まる「健康日本 21(第三次)」を推進するための基本方針を改正し、公表しました。このたびの改正においても、従来の「実行可能性のある目標をできるだけ少ない数で設定する」という考え方を踏襲し、第二次と同程度である約50項目の目標が設定されることとなりました。
今回は、その中から、栄養・食生活に関連する目標についてご紹介します。
「令和6年スタートの健康日本21(第三次)、その内容は?(1)」はこちらからご覧ください。
食塩摂取量の目標値は8g→7gへ
身体的、精神的、社会的に良好な食生活を実現するため、健康・栄養状態の観点から「適正体重を維持している者の増加」、適切な量および質の食事摂取の観点から「バランスの良い食事を摂っている者の増加」「野菜摂取量の増加」「果物摂取量の改善」「食塩摂取量の減少」について、令和14年を目途とした具体的な目標値が設定されました。これらはいずれも第二次でも目標値が設定されていた項目であり、引き続き改善を目指すものです。
栄養・食生活に関連する主な目標
健康日本21(第三次)の推進のための説明資料(厚生労働省)をもとに作成
その中で「果物摂取量の改善」については、第二次では“摂取量が少ない人(100g未満の人)の割合を減らす”という視点で目標が設定されていましたが、今回の改正では、果物(ジャムを除く果実類)の摂取量そのものについて200g/日という目標が定められました。この背景として、果物の摂取量が200g/日までは、摂取量が増えるに従い高血圧、肥満、2型糖尿病の発症リスクが減少すると報告されていることや、果物摂取量が200g/日程度まで増えると冠動脈疾患、脳卒中、全死亡の相対リスクが低くなると報告されていることなどがあります。
また、今回の改正では、食塩の摂取量の目標について、第二次における目標値(8g/日)より1g少ない7g/日とされました。これは、WHOによる目標値(5g/日未満)や、高血圧における減塩目標(6g/日未満)、日本人の食事摂取基準(2020 年版)における成人の食塩摂取の目標量(男性 7.5g/日未満、女性 6.5g/日未満)などを踏まえて設定されたものです。なお、令和元年国民健康・栄養調査によると、第二次における目標値(8g/日)以上の食塩を摂取している群においても、食習慣を改善する意思がない人の割合が男女とも約6割を占めていることから、食習慣改善に対する考え方も考慮した減塩の取組を進めていくことが求められています。
社会環境やライフコースアプローチも踏まえた健康づくり
個人の行動と健康状態の改善を促すためには、社会環境の質の向上も重要です。社会とのつながりの維持・向上の観点から「地域等で共食している者の増加」、自然に健康になれる環境づくりの観点から「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ(※)の推進」、誰もがアクセスできる健康増進の基盤の観点から「利用者に応じた食事提供をしている特定給食施設の増加」についての目標が設定されました。
また、ライフコースを踏まえた健康づくりの観点からは、従来のこどもや高齢者に関する目標に加え、ライフステージごとに女性ホルモンが劇的に変化する特性のある“女性”の健康課題の解決に関する項目が新設されました。
※正式名称:健康的で持続可能な食環境づくりのための戦略的イニシアチブ
栄養・食生活に関連する取組の概念図
厚生労働省資料より
「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」というビジョンの達成に向け、様々な角度から健康づくりの取組が推進されることが求められており、栄養・食生活に関するプロフェッショナルである管理栄養士・栄養士の役割にも期待が高まっているといえるでしょう。
詳細は、下記をご参照下さい。
健康日本21(第三次)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html