2021/12/13

Vol.217 (2) 第23回ダノン健康栄養フォーラムより 「第4次食育推進基本計画」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.217
第23回ダノン健康栄養フォーラムより
第4次食育推進基本計画
農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課長
 清水 正雄
 

 近年、わが国では成人男性の肥満、若い女性のやせ、高齢者の低栄養などが大きな問題となっています。子どもの頃の生活習慣形成から健康寿命の延伸に至るまで、生涯を通じた食育を推進することは、重要な課題です。また、日本の食料自給率はカロリーベースで40%弱と低迷しています。6割以上を輸入に頼っている一方で、年間約600万トンの食品ロス量を発生させているのが現状であり、これは国民経済、環境負荷、資源の有効利用などの観点からも問題です。さらに、食の生産現場である農村や漁村では人口の高齢化や減少が問題になっており、生産基盤の強化とともに、農業や食料の持続性に対する国民の意識を高めることも重要です。さらに、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による“新たな日常”や、近年のデジタル化の流れに、食育の面でも対応していくことが求められています。

 令和3年度から5年間の食育推進の方針を示した第4次食育推進基本計画は、これらの現状を踏まえて策定されました。国民の健康という視点から「生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進」、社会・環境・文化の視点から「持続可能な食を支える食育の推進」、そして、これらすべてに関わる横断的な視点から「新たな日常やデジタル化に対応した食育の推進」の3つを重点項目として位置付けました。

 昨今、持続可能な世界の実現を目指すSDGsへの関心が世界的に高まっています。SDGsを達成するためには、経済、社会、環境の3つの側面から相乗効果が生まれるように統合的に取り組むことが求められており、SDGsの目標との親和性が非常に高い食育においてもその考え方を踏まえて推進する方針が立てられました。

新たに追加された目標とそのポイント

 第4次食育推進基本計画において新たに追加した目標は次の通りです。


栄養教諭による地場産物を活用した食に関する指導の平均取組回数
・食塩摂取量の平均値、野菜摂取量の平均値、果物摂取量100g未満の者の割合
・産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合
・環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民の割合
・郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている人の割合

 “栄養教諭による地場産物を活用した食に関する指導”について、従来の目標では、学校給食における地場産物の使用割合を30%以上、国産食材の使用割合を80%以上というように、食材ベースの目標が掲げられていました。しかし、「地場産物や国産食材をどれだけ使ったか」ということよりも「地場産物等の活用について子ども達に教えたか」ということが重要ではないかという議論がありました。そこで、栄養教諭による地場産物を活用した食に関する指導の平均取組回数を、現状(令和元年度)の月9回から月12回以上にする目標が立てられました。

 食塩、野菜、果物の摂取量についての項目は、栄養バランスに配慮した食生活の実践を促すために、健康日本21(第二次)を踏まえて追加されました。特に、野菜や果物の摂取量の目標を達成するためには、従来型の「もっと食べましょう」という啓発だけでは不十分だと考えています。世帯構造が変化し、1人暮らしや2人暮らしなどの世帯も増える中でカット野菜やカットフルーツの需要が伸びていることから、 “コンビニでお弁当を買う時に、あわせてサラダやカットフルーツを買う”というような、国民が取り組みやすい方法を後押しする施策を進めていく予定です。

 “産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ”という部分には、地場産物を選ぶことだけでなく、災害の被害を受けた地域の農林水産物や食品を選ぶということも含んでいます。産地や生産者を応援する意識を持っていただける方を増やしていきたいと考えています。

 “環境に配慮した農林水産物・食品”とは、有機農産物や、乱獲しないよう資源管理された水産物、輸送に伴う二酸化炭素排出量が少ない地場産物や国産のもの、ごみの少ない簡易包装のものなどを指しており、それらの購買行動を促すような普及啓発にも取り組んでいきたいと思っています。

 また、日本の素晴らしい伝統的な食文化を後世に伝えていくためには、それらを様々な場面で「食べる」ことも重要であることから、新たに目標として追加しています。

農業の持続可能性を高める”みどりの食料システム戦略”

 今、農林水産省では、“みどりの食料システム戦略”を推進しています。これは、わが国の農業においてできるだけ化学肥料や農薬の使用を減らし持続可能性を高めようという取組です。わが国もカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量が相殺されている状態)を目指し、農林水産業の分野でも環境負荷の軽減というところに本格的に取り組んでまいります。その中では、環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進が非常に重要です。食品ロスを削減したり、消費者と生産者の交流を通じた相互理解を促進したりすることは、食の持続可能性を高めることに直結します。食育の分野においても、栄養の観点に加えて“食の持続可能性”という観点からもしっかり取り組んでいくことが求められていると言えるでしょう。

講演ダイジェスト動画


▽第23回ダノン健康栄養フォーラムの概要は、以下をご覧ください↓

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