2014/02/07

Vol.107(2) 第15回ダノン健康栄養フォーラムより 「健康づくりと地域連携―栄養ケア・ステーションの役割-」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.107
第15回ダノン健康栄養フォーラムより
健康づくりと地域連携―栄養ケア・ステーションの役割-
公益社団法人日本栄養士会 常任理事、栄養ケア・ステーション 事業部長
兵庫県立がんセンター総務部栄養指導課 総務部次長兼栄養指導課長 下浦 佳之 先生
 栄養の「栄(榮)」は「木を燃やして火を起こすこと」、「養」は「羊を食べること」を意味します。また、「食」は「人を良くする」と書きます。つまり、木を燃やして火を起こし、羊を食べて終わりではなく、人を良くしなければ「栄養」とは言えないということです。
 人は1日に3回、1年間では約1,000回食べます。人生を80年とすると、一生で80,000回になります。人生80年の中で既に60,000回、70,000回を食べてこられた一般の方に、私たち管理栄養士・栄養士が「実は、あなたの食べ方はこうした方が良いのです」と言っても、なかなか理解してもらえないでしょう。このようなところに管理栄養士・栄養士の難しさがあると思います。そして、管理栄養士・栄養士には、胎児から高齢者までの各世代のライフステージに合った栄養・食についての自立をサポートする大きな役目があると言えます。
 

わが国における健康問題の変化

 平均寿命が延び、超高齢社会を迎える今、健康寿命をいかに延ばすかが大きな課題であるのは言うまでもありません。そのためには、生活習慣病や要介護状態の予防が大きな鍵となります。生活習慣病は、病原体・有害物質・事故・ストレッサー等の外部環境要因、遺伝子異常・加齢等の遺伝要因、食生活・運動・喫煙・休養等の生活習慣要因が重なり合って発症します。その中で、生活習慣要因については管理栄養士・栄養士として関わることができます。ここに今後私たちが対応していくことによって、生活習慣病予防や要介護状態予防の働きかけができるのではないかと考えています。
 

栄養ケア・ステーションとは

 栄養ケア・ステーションは、国民の食環境の整備を推進する拠点と位置づけられています。これまで、地域の方々は、病院や施設に行かないと、なかなか管理栄養士・栄養士の顔を見ることができませんでした。しかし、それでは食生活の改善にはつながりません。そこで、顔が見える地域密着型の管理栄養士・栄養士の事業活動を行う拠点として、栄養ケア・ステーションを立ち上げたのです。
 当初、栄養ケア・ステーションは、厚生労働省の委託事業として特定保健指導と食育活動の拠点の整備事業という形で進められてきました。10県からモデル的に展開し、現在までに、各都道府県に1か所、日本栄養士会に1か所の48か所に栄養ケア・ステーションが設置されました。
 平成23年度からは、「疾病の重症化予防のための食事指導活動拠点整備事業」として取り組みを進めています。平成24年には、この事業を「栄養食事指導を通じて生活習慣病における合併症の予防を図り、気軽に栄養相談できるようなしくみを推し進めるプロジェクト」の頭文字をとって「E(え)GA(が)O(お)プロジェクト」と名付けました。「管理栄養士の顔が見えて、患者さんが笑顔になれる」を「愛ことば」に、かかりつけの管理栄養士がいても良いのではないかという考えでこのプロジェクトを推進しています。診療所の医師からの紹介依頼に基づき、栄養ケア・ステーションが研修で養成された管理栄養士を紹介し、雇用していただきます。診療所側にも「週に1日だけで良い」などの条件があるので、それらの条件に合致する管理栄養士・栄養士を紹介する仕組みをつくりました。
 しかし、現状の47の栄養ケア・ステーションでは「顔が見える」という状況までにはなりません。日本栄養士会は、今後「栄養ケア・リサーチ・センター」という形で事業の企画等を発信することを考えています。そのもとに各都道府県栄養士会は、営業の検討や調整を行う「栄養ケア・センター」としての役割を果たし、市町村またはもっと細かな地域に栄養ケア・ステーションをどんどん作っていこうと考えています。なお、この「栄養ケア・ステーション」は、拠点となる場所を必要としていません。食育を含め健康増進のための活動を行う「健康増進チーム」、CKDを得意とする人や糖尿病を得意とする人などが集まり医療を中心とした活動を行う「重症化予防チーム」、訪問栄養指導ができる「在宅療養チーム」等の専門チームを作り、これを日本栄養士会が「認定栄養ケア・ステーション」と認める仕組みを考えています。地域の中で管理栄養士・栄養士が役割をもって事業展開をしていくことで、地域に「顔が見える」栄養士、栄養ケア・ステーションが生まれるのではないでしょうか。
 

今後の栄養ケア・ステーションについて

 健康日本21(第2次)に、「健康づくりに関して身近で専門的な支援、相談が受けられる民間団体の活動拠点数の増加」という目標項目があります。現状は約7,000、平成34年度の目標は15,000となっています。日本栄養士会ではまだ48ですが、10年後には、保健所などと連携する都道府県栄養士会主体型の栄養ケア・ステーションで1,000、診療所など医療連携型の認定栄養ケア・ステーションで8,400を目標にしています。もっと大きな夢として、企業と連携してコンビニやスーパーマーケットやデイサービス等に認定栄養ケア・ステーションを立ち上げ、栄養相談・指導をすることもできるのではないかと考えています。また、東日本大震災の後、日本栄養士会として地域の被災者の健康を守るために在宅NSTステーションを開設し、復興支援や在宅の方々へのサポートをしているという実例もあります。このような取り組みを進める中で、管理栄養士・栄養士の使命に基づいてスキルアップを図っていかなければならないと考えています。
 健康づくり、疾病の予防、そしてCURE(治療)からCARE(看護・介護・看取り・介助)までの全てをまかなえるようなものであることが今後の栄養ケア・ステーションのあるべき姿だと考えます。今日のテーマは「これからの健康づくりをどう支えるか」ですが、地域における栄養ケアを支えるのは栄養ケア・ステーションであると思います。しかし、それは栄養ケア・ステーション単独でできるものではありません。他職種、他組織、他団体と連携しながら栄養ケア・ステーションを日本全国に広めていきたいと考えています。

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