メールマガジン「Nutrition News」 Vol.187
健康・栄養に関する学術情報
サルコペニア研究の最新知見とは?

 サルコペニアは生理的範囲を超える骨格筋の減少について、Rosenbergによって提唱された概念であり、ギリシャ語のSarx(筋肉の意)およびPenia(減少の意)を組み合わせて造られた造語です。その後、サルコペニアの診断基準の変更があり、骨格筋量の減少みならず、筋力や総合的に判断される身体機能を併せて評価すべきという考え方が主流になってきています。

 アジア地域における現在の診断基準は、握力(男性:26kg未満、女性:18kg未満)の低下、歩行速度の低下(0.8m/秒以下)に加え、骨格筋量の減少(男性:7.0kg/m2未満、女性:5.7kg/m2BIA)ないしは5.4kg/2DXA)未満)が合わせて認められた場合、サルコペニアと診断しています(アジアサルコペニアワーキンググループ)。

 サルコペニアの一次性の背景因子として、加齢に伴う成長ホルモン、テストステロン、グレリンの分泌低下、炎症性サイトカインの増加、ミトコンドリア機能低下、マイオカイン産生低下などによる筋タンパク合成の低下と分解の促進がサルコペニアにつながると考えられているようです。一方、二次性のサルコペニアは、臓器不全、炎症性疾患、悪性腫瘍、内分泌疾患、および栄養不良などによって生じると考えられ、QOL低下、転倒、骨折、フレイル、身体機能低下につながり、入院や死亡のリスクとなっています。また、認知機能との関連も指摘されています。

 高齢者の有病率については6-12%であり、その予防と治療に関しては、適切な栄養摂取、特にたんぱく質を1日体重1㎏あたり1g以上の摂取が推奨され、適度な身体運動も必要と考えられています。治療に関してはそのエビデンスレベルが低いと考えざるを得ない状況にあると結論されています。


参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

荒井 秀典 「世界のサルコペニア研究の最新知見」

日本食生活学会誌 第29巻 第2号 81-84 (2018)

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧できます。https://pdfs.semanticscholar.org/498f/1a29e57f857a34f9d13cec8c55a79f04113f.pdf

 

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