メールマガジン「Nutrition News」 Vol.179
2017年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
口腔内マイクロフローラに対する食生活の影響と全身疾患発症との関連性:健康長寿に関連する口腔細菌は存在するか?
島根大学 医学部 薬理学講座  

和田 孝一郎 先生

要旨

 近年、腸内の細菌叢の研究が進展し、宿主の健康との間の連関が明らかにされつつあるが、腸内に次いで共生細菌数が多いとされる口腔内における細菌と疾病との関係についての研究は多くはない。ここでは、特定の病原性口腔内細菌に加え、口腔内細菌叢の全体のバランスと宿主の健康との関連にも注目し、健常人と各種疾病患者の口腔内細菌叢の網羅的解析を進めることにより、口腔内細菌バランスが疾病の発症や健康の維持に果たす役割について検討し、口腔内細菌叢が宿主の健康に及ぼす影響について考察しています。

島根県全域を対象とし、地域検診受信者ないしは歯科検診受信者から口腔サンプルを採取し、口腔細菌の網羅的解析を行った。歯周病原性細菌の保菌率に地域差はないが、虫歯菌(Streptococcus mutans)の保菌率には地域差がみとめられた。口腔内細菌と全身性疾患との関連性で注目されたのは、歯周病原性細菌のPorphyromonas gingivalis(P.gingivalis)とHemoglobin A1c(HbA1c)との正の相関である。HbA1c値7を境界として、P.gingivalis保菌率を比較したところ、糖代謝異常が認められる被験者の保菌率が有意に高いことが明らかとなった(p<0.045、オッズ比2.24)。このことは糖尿病の発症にP.gingivalisが関与することを示す。

また、口腔内細菌叢は健常者と全身疾患を有する被験者では異なる可能性があり、口腔内細菌叢の差異が健康状態の維持や疾患発症と関連する可能性が示された。今後、より詳細に検討を加えることが必要となる。

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