メールマガジン「Nutrition News」 Vol.179
健康・栄養に関する学術情報
腸内細菌叢の乱れを修正する便移植とその効果や如何に?

 近年、腸内細菌叢の構成の乱れと全身疾患の発症との関連が明らかになってきています(腸内細菌叢とは、我々の腸内に共生する100-3000種、100-1000兆個にも及ぶ微生物集団のことを指します)。この中には、代謝疾患、炎症性疾患、および精神疾患など、我々の生活の質(QOL)を著しく低下させる腸内細菌が含まれています。

この腸内細菌叢の乱れを修正することで、これら疾患の発症の抑制や治療を行おうとする試みが世界中でなされています。手っ取り早く腸内細菌叢構成の乱れを修正しようとする荒療治が、他者の便を腸内に移植する便移植療法(Fecal Microbiota Transplantation: FMT)です。

この療法は、すでにディフィシル腸炎患者に対する有効性が明らかとなり、欧米ではすでに実用化されています。さらに難治性の潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)患者、クローン病(Crohn disease: CD)、さらには、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)患者に対する臨床研究、さらにはメタボリックシンドローム患者に対する臨床研究も行われています。

この報告では、著者らがUC患者に対して実施した臨床研究結果を含め、考察しています。これまでのところ、UC患者に対する明確な有効性判断やその有効性を支持する作用機序の推定まではできていないものの、抗生剤との併用治療に関しては、症状緩和の傾向とBacteroidetes門細菌の回復が示唆されている。UC患者に対するFMTの有効性評価と作用機序の解析については、至適条件下での臨床研究成果の集積により、有効性の確定と作用機作の検討が可能となるのではないかと思われます。


参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

大石 大、 岡原 昴輝、永原 章仁 「食用油を介した「便移植の現状と展望」

腸内細菌学雑誌 32 : 137-1442018

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/32/3/32_137/_pdf/-char/ja

 

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