メールマガジン「Nutrition News」 Vol.178
2017年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
妊娠母体が飲用する胎盤通過性オステオカルシンが胎児の糖脂質代謝関連臓器のエピジェネティックな変化に及ぼす影響
福岡大学 薬学部 統合臨床医学講座 免疫・分子治療学分野 

安河内(川久保) 友世 先生

要旨

 近年、生活習慣病胎児起源説(DOHaD: Developmental Origins of Health and Disease)という概念が注目され、様々な疫学調査によって実証されつつある。これは、母体の妊娠期栄養状態が、児の将来の生活習慣病発症リスクを左右していることを示唆しており、妊娠期・周産期における糖脂質代謝異常が世代を越えて受け継がれていくことを意味している。本研究では、母体の妊娠期栄養状態が、児の成育後の糖脂質代謝異常に及ぼす影響について病態モデルマウスを作成・解析し、生活習慣病胎児起源説の裏付け、さらには、妊娠期にも投与可能な生体(骨芽細胞)由来の蛋白質であるオステオカルシン(OC)を用いた次世代糖脂質代謝異常の予防法確立を目指した。

 妊娠中に高脂肪高ショ糖食を摂取していた母親マウスから生まれた仔は、普通食を摂取していた母親由来の仔に比べて、成熟後の糖代謝および脂質代謝に異常が認められた。しかし、高脂肪高ショ糖食を摂取している妊娠マウスにOCを飲用させると、妊娠母体の糖脂質代謝のみならず、胎盤を通過したOCが、仔の糖脂質代謝を制御し、糖脂質代謝異常を改善していることが明らかとなった。

 また、この世代を超えたOCによる糖脂質代謝制御の機序としては、胎盤を通過したOCが、胎児の糖脂質代謝関連臓器においてエピジェネティックな遺伝子変化を誘導している可能性が示唆された。そこで、妊娠母体のOC摂取による胎児の糖脂質代謝関連臓器におけるエピジェネティックな変化ついて、特にDNAのメチル化に着目し、網羅的に解析を行うことでその分子基盤を解析し、OCによる世代を超えたメタボリックシンドロームの予防法を探索中である。

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