メールマガジン「Nutrition News」 Vol.177
健康・栄養に関する学術情報
食用油の健康への影響には、腸内細菌や免疫系を介したものもある!
 消化管内は開放系であり、摂取した食品が消化吸収されるとともに、多種・多数の細菌が存在し腸内細菌叢を形成しています。一方で、微生物や有害物質から身体を守る各種免疫細胞も多く存在します。これまでの多くの研究の積み重ねにより、腸内細菌叢の違いが健康の維持や疾病の発症に影響することが明らかになっています。また、オリゴ糖などの食品成分が腸内細菌に代謝され、その代謝産物が免疫機能などに影響することも明らかになっています。食品成分の中の脂肪類についても、脂肪の種類によって体内での代謝産物が異なるとともに、種類の違いにより生体に異なる影響を及ぼすことが明らかになっております。今回は、体細胞のみならず腸内細菌による脂肪代謝産物が免疫系などに与える影響について解説した論文を紹介します。


(内容)
以下の項目について、次のような内容を詳しく解説しています。

  1. はじめに

  2. 食用油の脂肪酸構成
    各種食用油の脂肪酸組成には違いがあり、摂取した必須脂肪酸(ω3, ω6)組成の違いが腸管組織の脂肪酸組成比に影響を与える。

    3. ω3 脂肪酸から代謝・産生される抗アレルギー・抗炎症性脂質メディエーター
    ω3 脂肪酸、ω6脂肪酸の各種代謝産物の中で、ω6脂肪酸代謝産物が炎症促進作用を示す一方で、ω3 脂肪酸代謝産物が抗炎症作用を示す例が報告されている。

    4.食用油に含まれる脂肪酸による免疫制御
    筆者らの研究により食物アレルギーモデル動物で、ω3 脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油が抗アレルギー性を示すこと、腸管での代謝産物のうちEPAのエポキシ体の一種が抗アレルギー性を示し、その代謝産物は接触皮膚炎モデル動物でも効果を示すことが明らかとなった。

    5.微生物による脂肪酸代謝
    腸内細菌や発酵食品中の微生物により、不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸、水酸化脂肪酸、オキソ脂肪酸、共役リノール酸などが生成する。その中で、水酸化脂肪酸の一種は、通常マウス腸管組織中では無菌マウスに比べ顕著に多く、腸管バリア機能を強化して炎症性腸疾患の抑制効果を示すことが報告されている。

    6.食用油による腸内細菌叢の制御
    高脂肪食による腸内細菌叢の変化がヒトや実験動物で確認されている。さらに食用油の脂肪酸組成によっても腸内細菌叢は変動し、例えばマウスに魚油を与えた場合とラードを与えた場合では腸内細菌叢は異なり、ラードを与えたマウスではインスリン感受性の低下、白色脂肪組織の悪化、肥満の促進が見られた。また、これらに抗生物質を投与した後にマウス間で糞便移植を行うと、魚油を与えたマウスの菌叢がラードを与えたマウスの健康状態を改善し、その逆も成り立つことが確認された。

    7.おわりに


参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

雑賀 あづさ、 國澤 純 「食用油を介した「食事-腸内細菌-宿主」ネットワークによる免疫制御」

腸内細菌学雑誌 32 : 167-1742018

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/32/4/32_167/_pdf/-char/ja

 

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