メールマガジン「Nutrition News」 Vol.165
2016年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
母親の適切なタンパク質摂取が子どもの生活習慣病予防に与える影響についての前向きコホート研究 ~幼児期の食習慣およびエピゲノムの2側面からの検討~
国立成育医療研究センター研究所 社会医学研究部 ライフコース疫学研究室

森崎 菜穂 先生

要旨

 最近の研究から、妊娠中の食事は、子どもの将来の代謝機能に影響を及ぼしうることがわかってきている。特に、食事の中でもタンパク質不足は、オランダ飢饉に代表される疫学研究や、それに続く多くの動物実験の結果を踏まえると、将来的な耐糖能異常・脂質代謝異常に強く影響を与えると考えられている。本研究では、出生コホートを用いて、母親の妊娠中の食習慣が、子どもの3歳時点での食習慣および代謝機能の両面から、児の生活習慣病リスクに与える影響を定量的に評価することを目的とした。
 出生コホート参加者のうち、児の3歳時点での食習慣を回答した1,041名のうち、母親が妊娠後期に食習慣を回答していた775名を対象とした。コホート全体において、母親の妊娠中のタンパク質の平均摂取量は日本の摂取基準より少なく、また諸外国の平均摂取量と比して少なかった 。また、児の3歳時点における食習慣と母の妊娠後期の食習慣とは、総エネルギー摂取量(kcal)、タンパク摂取量(g)、食事中のタンパク質/エネルギー比(%)はいずれも有意な相関を示し、妊娠中からよく食べ、タンパク質を積極的に摂取する妊婦は、児にも同様の食習慣を付けさせている傾向が見られた。一方で、乳製品摂取量(g)、乳製品によるカロリー/総摂取カロリー比(%)は有意な相関を示さず、つまりは妊娠中の母の乳製品摂取量と、児の乳製品摂取量は関連していなかった。  
 また、出産時に胎盤を保存していた602名のうち、妊娠中合併症がなく体重増加量が適切であったやせ妊婦から出産した正期産の児54名について、妊娠初期および後期のタンパク質摂取量と胎盤エピゲノムの関連を調べたところ、妊娠初期のタンパク摂取のみ胎盤エピゲノム変化との関連を認めたため、妊娠後期より妊娠初期の栄養状態のほうが児のエピゲノムに影響を与えている可能性が示唆された。今後、更なる代謝機能の評価も予定している。

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