メールマガジン「Nutrition News」 Vol.220
「産官学で力を結集し、誰一人取り残さない食環境づくりへ」

日本における65歳以上の人口は、2042年に3,935万人でピークとなり、その後減少に転じると推計されています。一方、高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口割合)は、2042年以降も上昇を続け、2065年には 38.4%に達し、国民の約2.6人に1人が 65 歳以上になると考えられています。また、平均寿命は2040年には男性83.27歳、女性89.63歳になると推計されています。

来たるべき「人生100年時代」を活力あるものにするための課題の1つとして、“健康寿命の延伸”が挙げられます。特に、食塩の過剰摂取、若年女性のやせ、経済格差に伴う栄養格差などが活力ある社会づくりに立ちはだかる大きな課題となる中、適切な栄養・食生活を推進するための食環境づくりが急務となっています。さらに、SDGsの達成に向けた取り組みが広がりを見せる中、これらの“食環境づくり”には、地球環境や自然環境に配慮したものであることも求められています。                      

日本から、食環境の新たな次元を切り拓く

このような中、厚生労働省が立ち上げたのが“健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ”です。「日本から、食環境の新たな次元を切り拓く」を基本理念に、食環境を良くしていくための取り組みを個々に行うのではなく、産官学の力を結集して“誰もが自然に健康になれる食環境”を作り上げることによって、日本はもとより世界の人々の健康寿命の延伸や活力ある持続可能な社会を実現することを目指しています。

健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ 特設サイトより


  • 産業界(事業者)に期待される主な取り組み
    ・栄養面・環境面に配慮した商品の積極的開発・主流化 (食品製造事業者)
    ・事業者単位・全社的に行う栄養面や環境面の取組の推進 (食品製造事業者)
    ・上記商品の販売促進(食品流通事業者)
    ・健康的で持続可能な食生活の実践の工夫に関する情報提供(メディア等)


学術関係者に期待される主な取り組み
・中立的・公平な立場での食環境づくりに資する研究の推進・取組の進捗評価
・事業者への適正な支援、消費者への適正な情報提供
・食環境づくりを牽引する管理栄養士等の養成・育成等

国(厚生労働省)に期待される主な取り組み
・全体の仕組みづくり・成果等の取りまとめ、関係者間の調整
・健康・栄養政策研究を推進するための環境整備等

イニシアチブ設立記念フォーラム

2022年3月9日に、本イニシアチブの設立を記念するフォーラムがオンラインで開催され、活動方針や今後の活動予定などが説明されるとともに、女子栄養大学教授の武見ゆかり氏、株式会社ニューラル代表取締役の夫馬賢治氏による講演が行われました。

武見氏からは、複合的な政策により食塩摂取量の低下を実現したイギリスの例など、世界における食環境づくりの取り組み効果などのデータが示されました。また、これから展開していく日本の食環境づくり(日本モデル)の特徴として、規制を行うのではなく、各事業者の独自性を尊重するものであることが挙げられました。健康教育などの情報提供は重要であるものの単独では効果が弱いことから、商品自体や売り方を変えるなどの環境整備は必要不可欠であるとし、世界に認められる日本モデルを構築していくための“企業の力”に大きな期待が寄せられました。

夫馬氏からは、事業者にESG(社会・環境・ガバナンス)の視点が求められていることが述べられました。近年、栄養不足人口の増加などの健康問題が経済問題にも発展する中、ESGにコミットする機関投資家が急増しているそうです。栄養を軽視すれば消費者の健康は悪化し、労働者の生産性の低下、医療費負担の増大等を介して企業利益の低下につながります。機関投資家としてもリターンが減少することから、今や投資家が企業に対して健康な食事を提供すること求める時代になったといいます。事業者においてもこのような状況を理解し、“消費者が動くのを待つ”のではなく“消費者を動かしていく”ための取り組みを、このようなイニシアチブも活用しながら進めていくことが不可欠であるとされました。

 

参考

自然に健康になれる持続可能な食環境づくりの推進に向けた検討会 報告書(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/newpage_19522.html

健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ 特設サイト

https://www.nttdata-strategy.com/hsfe/

 

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