メールマガジン「Nutrition News」 Vol.210
健康・栄養に関する学術情報
日本人・アジア人の腸内フローラの特徴と食習慣との関連は?

 

腸内フローラと健康との関連について大きな関心が持たれています。個々人の腸内フローラは各人各様ですが、その構成は生理状態や食事などの影響を受けます。今回は、アジア各国の子供たちの腸内フローラを比較し、食事習慣との関連を考察した論文を紹介します。

(内容)

以下の項目について、次のような内容を詳しく解説しています。

  1. はじめに

筆者らはアジア10か国の共同研究者とAsian Microbiome Project (APM)を設立し、アジア人の食・腸内細菌叢・健康についての調査を行っている。国ごとに固有の特徴がみられるが、都心部ではそれが薄れる傾向が観察された。

  1. 第一期調査:アジア5か国10都市の小学児童303名の腸内細菌叢

腸内細菌叢はPrevotellaを多く含むタイプ(Pタイプ)と、BacteroidesBifidobacteriumを多く含むタイプ(BBタイプ) 大きく二つに分かれることがわかった。Pタイプは東南アジアやモンゴルに多く、BBタイプは日本、中国、台湾に多かった。

  1. 第二期調査:アジア人腸内細菌叢の基盤データベース構築

7か国500人強の小学児童から高齢者までの腸内細菌叢と年齢との相関を調べた結果、各国共通して年齢とともにBifidobacteriumが減少しEnterobacteriaceaeが増加する傾向が認められた。

  1. 第三期調査①:フィリピンレイテ島小学児童の食と腸内細菌叢の調査

レイテ島2都市の児童の腸内細菌叢を比較した結果、脂質摂取の多い食の欧米化が進んだ都市ではBBタイプが多く、脂質代謝関連遺伝子が集積されていることが認められた。

  1. 第三期調査②:タイ小学児童の食と腸内細菌叢の調査

タイ2都市の児童の食事調査と腸内細菌叢解析を行った結果、野菜・発酵食品を多く摂取し脂肪摂取の少ない伝統的食習慣の残る都市の児童では、腸内細菌の多様性が高く便中の短鎖脂肪酸(抗炎症作用や代謝ホメオスタシス制御作用を持つ)濃度も高かった。

  1. おわりに

食習慣の変化にともなう腸内細菌叢の変化、その健康への影響にどのように対処していくか真摯に向き合う必要がある。


参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

中山二郎
「腸内フローラ研究からみた日本人とアジア人の健康」
日本食生活学会誌 29: 137-140, 2018

 

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/29/3/29_137/_pdf/-char/ja

 

 

 

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