メールマガジン「Nutrition News」 Vol.199
2018年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
レチノイン酸産生代謝制御作用を有する食品成分による食物アレルギー体質の改善
富山大学 和漢医薬学総合研究所 病態制御部門 消化管生理学分野     
長田 夕佳 先生

要旨

 アレルギー疾患罹患率は先進国において増加し社会的な問題となっていますが、根本的な治療法は開発されていません。また、食物アレルギーの患者では、制御性T細胞の分化誘導が不十分であることが最近の研究によって指摘されています。

著者らは、食物アレルギーモデルマウスを用いて、生薬「葛根湯」がレチノイン酸の作用を増強することで、腸管に制御性T細胞をより多く誘導し、効率的な免疫寛容を誘導することで食物アレルギーの発症を抑制することを明らかにしています。

 

【要旨】

 食物アレルギー疾患では制御性T細胞が食物抗原感作リンパ球に対し相対的に不足し、免疫学的アンバランスな状態にあると考えられている。報告者らは、食物アレルギー病態モデルを用いた検討から、葛根湯が腸管に制御性T細胞を誘導しアレルギー症状を抑制することを明らかにしている。さらに、その機序に腸管でのレチノイン酸産生の亢進が関与することを明らかにしている。本研究では、食物アレルギーの予防や治療と「食」との関わりを新たに見出すことを目的に、葛根湯構成生薬を中心にレチノイン酸産生代謝を制御する食品成分を探索した。その結果、(A)生姜はヒト腸管上皮細胞のレチノイン酸合成酵素ALDH1a1発現を誘導すること、また(B)葛根に多く含まれるイソフラボンは腸管粘膜のレチノイン酸分解酵素CYP26B1発現を抑制し、マウスのアレルギー発症を抑制することを明らかにした。これらのことは、食品成分が腸管でのレチノイン酸産生代謝を促進し、レチノイン酸量が増加することで、腸管へ制御性T細胞を誘導する可能性を示す。日常的に摂取する食品成分による腸管への恒常的な制御性T細胞の誘導は、免疫学的アンバランスを回復させ、食物アレルギーに罹らない体質への改善が期待できる。

 

 

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