メールマガジン「Nutrition News」 Vol.134
「レッドミート・加工肉の発がん性について」
  平成27年10月26日、IARC(国際がん研究機関)は、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、レッドミートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と評価し、毎日50gの加工肉は大腸がんのリスクを18%増やすと発表しました。レッドミートとは、牛肉、豚肉、羊肉、馬肉などを含む全てのほ乳類の肉を指します。また、加工肉は塩漬けや燻製などのように香りや保存性を高めるための加工をした肉で、ハムやソーセージ、コンビーフなどが挙げられます。IARCの発表を受け、WHOは10月29日、IARCとは別の委員会で、レッドミートと加工肉についての、最新の科学に基づいた議論を来年早期に始めることを発表しています。
 これについて、食品安全委員会は、11月30日、ホームページに「レッドミートと加工肉に関するIARCの発表についての食品安全委員会の考え方」として詳しい解説を公表しました。

IARCの評価の意味

  IARCは、がんの原因特定によって予防措置や病気の負担軽減に資することなどを目的とした研究機関です。主な活動として、物質や作業環境などの様々な要因の発がん性を、グループ1~グループ4に分類しています(表1)。
 
表1 IARCによる発がん性の分類 
vol134iarc
食品安全委員会HPをもとに作成
 
 今回のIARCの発表は、レッドミート・加工肉にヒトに対する発がん性があるかどうかをこれまでの研究データを総合して判定したものであり、ヒトに対してどの程度がん発症のリスクがあるかを判断したものではありません。

「ハザード」と「リスク」は違う

 ある物が持っている有害性のことを「ハザード(危害要因、危険因子)」と言い、食品中にハザードが存在する結果として健康に悪影響を及ぼす確率や、その影響の程度のことを「リスク」と言います。例えば、ある食品にハザードとなる物が含まれていた場合に、その食品の摂取量が多くなればリスクも大きくなり、摂取量が少なければリスクも小さくなります。今回のIARCの発表について、日本の国立がん研究センターは、日本人のレッドミート・加工肉の摂取量は1日あたり63g(レッドミート:50g 、加工肉:13g)と世界で最も低い国の一つであることから、平均的な摂取の範囲であればレッドミートや加工肉が大腸がんのリスクに与える影響は無いか、あっても小さいと発表しています(図1)。
 
図1 ハザードとリスク
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食品安全委員会HPをもとに作成
 
 疫学研究では、原因と結果に様々な要因が関係していることから、因果関係を推論することが非常に困難です。また、国による食生活や人種などの差も考慮する必要があります。食品安全委員会は、今回のIARCの評価について「肉に含まれる成分が、発がん性と関連がある」または「レッドミート・加工肉の過剰摂取が、発がん性と関連がある」と解釈されるべきとしています。
 

全体のバランスで安全性や健康影響を捉えることが大切

 国立がん研究センターによると、日本人の食生活に欠かせない穀類や生体に必須である食塩についても、胃がんの増加との関連性が指摘されています。また、発がん性だけでなく、塩分の過剰摂取と高血圧、炭水化物の過剰摂取と糖尿病、アルコールの過剰摂取と肝障害のように、特定の食品の過剰摂取が特定の疾患リスクを高めることが知られています。
 肉は、タンパク質やビタミンB群など健康維持に必要な成分を含んでいますが、肉を極端に避けても、過剰に摂取しても、食生活全体のバランスは崩れてしまいます。どのような食品にも体へのメリットとともにデメリットやリスクがあり、食品の一部分ではなく、全体のバランスで食品の安全性や健康影響を捉える必要があると言えます。
 
 食品安全委員会は、現在バランスの良い食生活をおくっている人が無理に食生活を変えると、かえって悪影響が現れると指摘し、これまでどおり「食事バランスガイド」などを参考にしながらバランスの良い食生活を送ることを呼びかけています。
 
参考
レッドミートと加工肉に関するIARCの発表についての食品安全委員会の考え方(食品安全委員会)
http://www.fsc.go.jp/fscj_message_20151130.html
 
 
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