メールマガジン「Nutrition News」 Vol.266 2026年1月5日発行
「気候変動と私たちにできること」
近年、「気候変動」という言葉を耳にする機会が増えてきました。気候変動とは、気温や気候パターンの長期的な変化を指します。真夏の猛暑や秋まで続く暑さ、突然の豪雨など、私たちの生活の中でも気候変動の影響を身近に感じる場面が増えています。
気候変動がここまで進んだ原因はどこにあるのでしょうか。そして、未来の世代により良い地球を残すために、私たちにできることは何でしょうか。
気候変動が起こる要因と影響
気候変動が起こる要因は、大きく次の2つに分けられます。
- 太陽の活動や火山の噴火、海流の変動などの自然要因
- 温室効果ガスの増加や森林破壊など、人間活動に伴う人為的要因
ここ数年、世界各地で極端な気象現象が相次いでいます。国内最高気温を記録した国が複数あるほか、森林火災で広大な森林を焼失した国や、1か月の降水量が極端に増加した国、数か月にわたる干ばつに見舞われた地域もあります。また、南極では冬季の海氷域面積が観測史上最少になっています。
このような異常気象の原因について、2023年3月公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第六次評価報告書では「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない」と明記されました。気候変化に伴う現象(気温上昇や干ばつなど)は、水資源や生態系にも影響を及ぼし、その結果、食料生産の変動や熱中症・感染症のリスク増加など、私たちの生活にも深刻な影響をもたらす可能性があります。
温室効果ガスと地球温暖化の関係
温室効果ガスとは大気中の熱を吸収する性質を持ったガスのことで、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロン類などがあります。
太陽の光(熱エネルギー)が地球に届くと、地表が温まります。その熱は赤外線として宇宙に向かって放出されますが、大気中に温室効果ガスがあると、その一部が吸収され、熱が逃げにくくなります。その結果、大気が温まり、地球の気温が上がります。
現在の地球の平均気温は14℃ほどですが、もし、温室効果ガスが全くなかったとしたら、地球の平均気温は氷点下19℃になるといわれています。つまり、一定量の温室効果ガスは私たちが快適に過ごすために必要なものなのです。しかし、近年では人間活動により温室効果ガスが過剰に増え、地球温暖化の大きな要因となっています。
日本の温室効果ガスの排出量の内訳
日本の温室効果ガス排出量は、2013年度をピークに減少傾向となっています。温室効果ガスの中でも最も排出量が多いのは二酸化炭素(CO2)で、全体の92.3%を占めています。部門別のCO2排出量では、産業部門が34.3%、運輸部門が19.2%と大きな割合を占めていますが、家庭部門も14.9%あり、その割合は決して少ないとはいえません。地球温暖化を含む気候変動による被害をこれ以上拡大させないためには、企業や公共部門だけでなく、家庭においても温室効果ガスの排出削減に意識をもって取り組む必要があります。
私たちにできることとは?
気候変動への対策は、大きく「緩和」と「適応」の2つの視点で考えられます。
緩和:気候変動の原因である温室効果ガスの排出量を削減する取り組み
- 節電・省エネや、エネルギーの効率のよい機器の使用
- 自転車や徒歩での移動、エコカーの利用、再配達の削減
※最近はCO2排出量を表示する乗換案内サービスも増えています。
- 再生可能エネルギーの活用
- 森林保全・拡大によるCO2吸収
- ゴミの分別(正しい分別がリサイクルを促進)
適応:気候変動の影響に備え、被害を回避・軽減する取り組み
- 熱中症対策
- デング熱対策(気温上昇により蚊媒介感染症のリスクが増加)
- 豪雨災害などへの備え
- 渇水時の節水対策
- 高温でも育つ作物の品種開発や栽培
気候変動への対策は、普段の生活の中で意識を変えるだけで実践できます。一人の力は小さくても、100人、1,000人と多くの人が現状を知り、意識をもって行動に移す一歩を踏み出せば、未来の世代にも住みやすい地球を残せるのではないでしょうか。
■参考文献 (全て2025年12月5日最終アクセス)
● ecojin「猛暑や大雨によって起こる災害にどう備える?気候変動の観点から、防災について考えてみよう」(環境省)
https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20231004.html
● ecojin「加速する気候変動 私たちのミライのために今できること」(環境省)
https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20250625.html
● IPCC 第6次評価報告書(AR6) 統合報告書(SYR)の概要(2024年11月版)(環境省)
https://www.env.go.jp/content/000265060.pdf
● 2023 年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(環境省)
https://www.env.go.jp/content/000310279.pdf
● 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)「気候変動影響と対策 緩和」(国立研究開発法人国立環境研究所)
https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/adapt/a-0202.html
● 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)「気候変動影響と対策 適応」(国立研究開発法人国立環境研究所)
https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/adapt/a-0203.html
