メールマガジン「Nutrition News」Vol.265 2025年12月1日発行
健康・栄養に関する学術情報
「ヘルシーエイジングに必要な機能的能力と将来のウェルビーイングの関係」
世界的に人口高齢化が加速する中、2030年には世界の6人に1人が60歳以上になると予想され、2020年から2050年の間に80歳以上の人口は4億2,600万人に達すると予想されています。【1】
国際連合(United Nations, 以下国連)は2021年~2030年の10年間を「Decade of Health Ageing(健康な高齢化の10年)」としました。これは各国において高齢者、その家族や高齢者がいるコミュニティの生活を向上させることを目的とし、政府、市民社会、国際機関、専門家、学術界、メディア、民間セクターといった多様な協働が必要とされる世界規模の取り組みです。【2】
これを実施するにあたり主導を担う世界保健機関(World Health Organization,以下WHO)は、ヘルシーエイジングについて、病気や体力の衰えが妨げになるとは限らず「高齢になってもウェルビーイングでいるための機能的能力を育て、保ち続けること」と定義をしています。【3】機能的能力とは、価値ある存在となり、価値ある行動をすることを可能にする能力のことです。【4】
機能的能力には
・基本的なニーズを満たす力
・自由に移動する力
・人間関係を築く力
・学び・成長し・意思決定する力
・社会へ貢献する力
という5つの項目が挙げられます。【3】
今回はヘルシーエイジングにおいて重要と考えられている「機能的能力」の測定尺度や予測妥当性(将来のウェルビーイングを予測するかどうか)を検討した京都大学大学院医学研究科の近藤尚己教授、西尾麻里沙同博士課程院生らの研究グループの研究をご紹介します。
目的
国連は、機能的能力を健康的な高齢化の進展を測る重要な指標として、各国にモニタリングを推奨しています。しかし、機能的能力はその測定方法やWHOが提唱した複数のカテゴリーの妥当性がほとんど検討されていないことによりモニタリングの実施が困難でした。このことから高齢化の最前線にある日本の高齢者の縦断的データを用いて新たに機能的能力の測定方法を開発し、機能能力の構成的妥当性、交差妥当性および予測妥当性を検討することを目的としました。
対象と方法
・日本老年学評価研究(JAGES)の2013年と2016年の調査の両方に参加した65歳以上の35,093名のデータを用いた。
・機能的能力に関わる31に項目(友人を訪ねる、自分で書類を整理する等)を用いた。
・続いてその中から機能的能力が高い人ほど3年後の幸福度と主観的な健康感が高いかどうかを調べた。
結果と結論
・最終的には機能的能力が3つの因子からなる24項目で測定できることが明らかになった。
・3つの因子とは
1)人間関係を築き、維持する能力
2)基本的なニーズを満たす能力+自由に移動する能力
3)学び、成長し、意思決定をする能力+社会へ貢献する能力
である。
・さらにこの尺度で測定された機能的能力は3年後のウェルビーイング(主観的な健康感と幸福度)を予測することが示された。
・これにより、この研究はWHOの提唱した「機能的能力が複数のカテゴリから構成され、将来のウェルビーイングを予測する」ことを示した初めての研究となった。

今後に向けて
今後に向けて研究グループは「今回の研究結果を受けて、ヘルシーエイジングの考え方が各国で普及し、その達成度を評価したり、国際比較していくといったさらなる研究が進むことが期待されます。」【4】と述べています。
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詳細は下記論文をご参照下さい。
本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
Age and Ageing, Volume 53, Issue 1, January 2024, afad224,
https://doi.org/10.1093/ageing/afad224
参考文献:全て2025年11月13日にアクセス
【3】Healthy ageing and functional ability
【4】京都大学プレスリリースNo: 416-24-2
jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=5437&room_id=549&cabinet_id=320&file_id=14240&upload_id=19047
