2024/12/02

Vol.253 (3) 健康・栄養に関する学術情報 「蛋白質を何から摂る?代替肉の可能性~粒状大豆たん白と大豆ミート~」

メールマガジン「Nutrition News」Vol.253  2024年12月2日発行
健康・栄養に関する学術情報
「蛋白質を何から摂る?代替肉の可能性~粒状大豆たん白と大豆ミート~」

近年、目にする機会が増えてきた「大豆ミート」。

蛋白質は私たちが生きていくうえでとても大切な栄養素のひとつですが、一体何がきっかけで「肉」や「魚」以外の蛋白質の給源・大豆ミートの需要が増えているのでしょう。また、今後私たちの生活にどのようにかかわってくるのでしょうか。

今回は、代替肉に関する現状と粒状大豆たん白と大豆ミートについて記載された総説をご紹介します。

なぜ代替肉の需要が増えたのか?

・ESG やSDGs という言葉が国連から生まれ、企業や社会がその対応を求められている。環境保護や動物愛護など挙げられるが、主な要因は人口増加への対応である。
・世界人口は、2019年から2050年までの30年余りの間で新たに20億人増える予想となり、その分の食料を準備する必要がある。
・しかし、森林を切り開く余地はなく、耕地面積はほぼ横ばいである。単収増により必要量を賄う予想がなされているが、順調に単収を伸ばして必要量が確保できるのかという懸念もある。
・とくに蛋白質の供給源である食肉の生産には多くの水や穀物、土地が必要で、生産量拡大の余地は限られる。

このような点から、食肉よりも効率よく生産できる蛋白質の給源として代替肉に注目が集まっているのです。

代替肉の種類と消費者の受容性

「代替肉」と言ってもその給源にはいくつかあります。著者はそれらを環境保護、 動物愛護、 食経験、 肉食感、 消費者受容という視点から見た消費者の受容性を示しています。

大豆たん白粒状大豆たん白、大豆ミート、それぞれの特徴や用途は?

●大豆たん白

大豆を脱皮脱胚軸して搾油することで脱脂大豆が作られる。これを原料として粒状及び粉末状大豆たん白の製造が行われている(図 2)。2020 年度の国内生産量は、粒状大豆たん白 36,046 t、粉末状大豆たん白 8,153 t)である。粒状大豆たん白の生産量は近年増加傾向にあり、10 年前の約 1.5倍となっている。

粉末状濃縮大豆たん白は、脱脂大豆からホエー成分を除いた蛋白質と食物繊維からなる製品です。粉末状大豆たん白は、ハム・ソーセージなどの食肉水産加工食品の結着やプロテイン粉末飲料などの蛋白源に使われる。

●粒状大豆たん白 粒状大豆たん白には、ミンチタイプ、ミートタイプやパフタイプ(大豆の特長成分を生かしたシリアル用素材)など用途に応じて様々な形状・食感のものがある。(図7)

●大豆ミート

・大豆ミートは、粒状大豆たん白を加工したものである。

・以前からベジタリアン向けなどに製造され国内外で販売されてきた。近年、欧米では肉に近づけた風味・食感のハンバーグが、環境保護、持続可能な経済活動などの背景からも注目され、生産数量を拡大してきている。

・日本でもスーパーマーケットで購入できるほか、ハンバーガーショップやコンビニエンスストアでも大豆ミートのメニューが食べられる。また、家庭でも調理可能な粒状大豆たん白を水戻し加工した大豆ミンチも販売されている。

結び

著者は「代替肉は、栄 養、美味しさ、安全、適切な価格で十分量供給できる肉様食品として市場に認められたものが、肉との比較選択肢のひとつとして定着していくものと考える。大豆ミートはその最有力候補である。大豆ミートが地球環境、人々の健康、食料問題などの社会課題の解決に大きく貢献する日は思ったよりも早く来るのではないかと考えている」と述べています。

私たちが毎日当たり前のように食べている食品には、様々な要因が複雑に絡み合っています。

それを一つ一つ解決し、多くの人が安心して美味しく食べられるようになるというのはとても大変なことだと感じます。

また、地球に住む一生物として、現在の問題点を知り、このような選択肢があることを知っておくことは解決への一歩を踏み出すきっかけになるのだと思います。




詳細は下記論文をご参照ください。

日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.) Vol. 54,No. 6,259~265(2021)〔総説〕

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/54/6/54_259/_pdf/-char/ja

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。

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