メールマガジン「Nutrition News」 Vol.135
第17回ダノン健康栄養フォーラムより
健康長寿と食事
国立健康・栄養研究所 営業教育研究部 栄養ケア・マネジメント研究室/食育研究室
室長 髙田 和子 先生
第17回ダノン健康栄養フォーラムより
健康長寿と食事
国立健康・栄養研究所 営業教育研究部 栄養ケア・マネジメント研究室/食育研究室
室長 髙田 和子 先生
日本が長寿国であるだけでなく“健康長寿”の国であることは、既に広く知れ渡っています。しかし、その“健康長寿”を支える食事がどのようなものなのかを定義することは、非常に困難です。なぜなら、食事は栄養のバランスだけでなく、経済、嗜好、食文化など、様々な要素によって構成されているからです。
健康長寿と食事パターン
そのような中、最近では、食事パターンを解析する研究が増えてきています。米飯を中心にした朝食では、味噌汁や納豆などを一緒に食べることが多いように、食品では、一緒に食べる食品の組み合わせパターンがあります。このような「多くの人が組み合わせる食事パターン」を見つけ、その組み合わせの強さによって疾病の発症や死亡率を検討するという研究です。
日本人に関するこれまでの研究結果では、次のような関連が見出されています。
・総死亡率の低下・・・乳製品を多く食べるパターン、緑茶をよく飲む
・心血管疾患死亡・・・豆製品、野菜、海藻、漬物、茶、魚を多く食べるパターン
・大腸がんの減少・・・乳製品、果物、野菜、炭水化物が多くアルコールの摂取が少ないパターン
・鬱予防・・・緑黄色野菜、根菜類を多く食べるパターン
・認知症発症予防・・・緑黄色野菜、野菜、大豆製品、海藻、乳製品を多く食べるパターン
FAOのデータを見ても、日本では諸外国に比べて大豆の摂取量が非常に多く、魚介類の摂取量も多い一方で、肉類や砂糖類の摂取量は少なくなっています。このような日本に特徴的な食事パターンが、現時点で、健康長寿に関連している可能性が考えられるでしょう。
日本人に関するこれまでの研究結果では、次のような関連が見出されています。
・総死亡率の低下・・・乳製品を多く食べるパターン、緑茶をよく飲む
・心血管疾患死亡・・・豆製品、野菜、海藻、漬物、茶、魚を多く食べるパターン
・大腸がんの減少・・・乳製品、果物、野菜、炭水化物が多くアルコールの摂取が少ないパターン
・鬱予防・・・緑黄色野菜、根菜類を多く食べるパターン
・認知症発症予防・・・緑黄色野菜、野菜、大豆製品、海藻、乳製品を多く食べるパターン
FAOのデータを見ても、日本では諸外国に比べて大豆の摂取量が非常に多く、魚介類の摂取量も多い一方で、肉類や砂糖類の摂取量は少なくなっています。このような日本に特徴的な食事パターンが、現時点で、健康長寿に関連している可能性が考えられるでしょう。
自立度の維持と食事
健康長寿のためには「自立度」も重要な観点となります。秋山ら(2010)の研究によると、男性では維持していた自立度が急に落ちて亡くなる傾向にある一方で、女性では比較的早い時期に自立度が少し落ち、そのまま維持する傾向になっています。どちらが良いのかは分かりませんが、できれば、ある程度の自立度を維持して生きていきたいものです。そのためには、自分の身の回りのことができるための筋力や体力が必要です。筋肉中のタンパク質は常に合成と分解が繰り返されているため、筋肉量を維持するためには、この合成と分解のバランスをとることが重要となります。
平成24年度の国民健康栄養調査の再解析をしたデータから、日本人は、夕食では主食・主菜・副菜のそろった食事をとることが多い一方で、朝食や昼食では主食・主菜・副菜がそろった食事が少ないことが分かっています。主食・主菜・副菜がそろわない食事は、タンパク質摂取の面ではどのような影響を及ぼすのでしょうか。
食事摂取基準におけるタンパク質の目標量を体重当たりに換算すると、0.9g/kg程度になります。主食・主菜・副菜がそろった食事回数が0回の場合、この量を満たすことはまずできません。3種類がそろう回数が1回でかろうじて満たす程度です。しかし、サルコペニア予防を考慮すると、1.2~1.5g/kgのタンパク質が必要であると言われており、それを満たそうとすると、主食・主菜・副菜がそろう回数が1回では全く足りません。このことからも、主食・主菜・副菜がそろえた食事をとることが、タンパク質の必要量を満たすために重要になると言えるでしょう。
なお、1日に摂取するタンパク質について、3食で均等に摂取した場合と、朝食での摂取が少なく夕食での摂取が多い場合で、筋タンパクがどのくらい新しく作られるかを比較したアメリカの研究があります。これによると、1日の摂取量は同じでも、朝食でのタンパク質摂取が少ない方が、3食で均等に摂るのと比べて約25%も筋タンパクの合成が少なかったという結果が出ています。タンパク質は1度に摂るのではなく、毎回の食事で摂る方が良いことを示唆するデータです。日本人の食生活はタンパク質摂取量も含めて良くなっていますが、改善の余地があるとしたら、1日の中でのタンパク質摂取のバランスを考える必要があるかもしれません。
平成24年度の国民健康栄養調査の再解析をしたデータから、日本人は、夕食では主食・主菜・副菜のそろった食事をとることが多い一方で、朝食や昼食では主食・主菜・副菜がそろった食事が少ないことが分かっています。主食・主菜・副菜がそろわない食事は、タンパク質摂取の面ではどのような影響を及ぼすのでしょうか。
食事摂取基準におけるタンパク質の目標量を体重当たりに換算すると、0.9g/kg程度になります。主食・主菜・副菜がそろった食事回数が0回の場合、この量を満たすことはまずできません。3種類がそろう回数が1回でかろうじて満たす程度です。しかし、サルコペニア予防を考慮すると、1.2~1.5g/kgのタンパク質が必要であると言われており、それを満たそうとすると、主食・主菜・副菜がそろう回数が1回では全く足りません。このことからも、主食・主菜・副菜がそろえた食事をとることが、タンパク質の必要量を満たすために重要になると言えるでしょう。
なお、1日に摂取するタンパク質について、3食で均等に摂取した場合と、朝食での摂取が少なく夕食での摂取が多い場合で、筋タンパクがどのくらい新しく作られるかを比較したアメリカの研究があります。これによると、1日の摂取量は同じでも、朝食でのタンパク質摂取が少ない方が、3食で均等に摂るのと比べて約25%も筋タンパクの合成が少なかったという結果が出ています。タンパク質は1度に摂るのではなく、毎回の食事で摂る方が良いことを示唆するデータです。日本人の食生活はタンパク質摂取量も含めて良くなっていますが、改善の余地があるとしたら、1日の中でのタンパク質摂取のバランスを考える必要があるかもしれません。
人との関わり
私が関わっている研究の中で、運動を実施し且つ食事も気をつけている人では、何もしていない人に比べて死亡率が約32%低下したという結果が出ています。また、そこに社会参加(地域での活動、家庭内の役割など)が加わると、死亡率は約51%低下したという結果が出ています。もちろん、積極的に社会参加できる体を持った方だから長寿であったということもありますし、社会参加のために出かけることが運動量の増加につながったなど、色々な要因が重なるでしょう。しかし「人との関わり」というのも、健康長寿のためには重要なのではないかと思います。
近年、家族そろって食事を食べる機会が減っていると言われています。「健康長寿と食事」を考えるとき、管理栄養士・栄養士の皆さんには、栄養素や食品の組み合わせも大切ですが、それだけではなく、食事を取り巻く環境まで含めた広い考えを持っていただきたいと思っています。
近年、家族そろって食事を食べる機会が減っていると言われています。「健康長寿と食事」を考えるとき、管理栄養士・栄養士の皆さんには、栄養素や食品の組み合わせも大切ですが、それだけではなく、食事を取り巻く環境まで含めた広い考えを持っていただきたいと思っています。