講演2

座長
女子栄養大学 副学長
武見 ゆかり

「食とヘルシーエイジング」
女子栄養大学 栄養学部 教授
新開 省二
ヘルシーエイジングにはライフコースアプローチが肝要であるが、中高年期であっても適切な食に
よってその後のエイジングの軌跡は変わりうる。
わが国では世代により栄養問題が異なり性差や個人差も大きい。健康指標の一つであるBMIの
適正範囲は21~27と広いが、肥満は中年者の、やせは高齢者の健康リスクである。
ヘルシーエイジングに向けた課題として、中年期はメタボや生活習慣病の、高齢期ではフレイルや
生活機能低下の予防がある。これは縦断的疫学研究から得られた知見である。われわれの草津町
研究でも一般高齢者約2,800人が20年以上にわたって追跡されている。それによると、自立生活が
可能な余命(=健康余命)には疾病要因(高血圧や脳卒中など)と老化要因(筋力や身体機能、栄養
状態)の2つが大きく影響していた。また、脂質異常症やメタボリック症候群は健康余命に影響せず、
糖代謝の指標であるHbA1cでは5.4%を下回ると後期高齢者の認知機能低下リスクが上昇するな
ど、中年期と違って疾病要因の影響は小さくなり、老化要因の影響が大きくなる。
高齢期のヘルシーエイジングに向けては、3つの柱(食、身体活動、社会参加)が重要である。食で
は、まず食品摂取の多様性(Dietary v ariety; DV)が高いことが望ましい。10の食品群の摂取頻
度から算出されるDVスコアが高い人では、PFC比率におけるP(タンパク質)とF(脂質)の比率が高
く、微量栄養素の摂取量も多い。こうした栄養特性がヘルシーエイジングに寄与すると考えられる。ま
た、いつまでも「美味しく食べる」ためには、お口の健康にも留意が必要である。機能歯を20本以上確
保し噛む力が維持できれば、自歯20本以上のものと健康余命に差はない。さらに「楽しく食べる」た
めに共食・会食の機会を増やしたい。食は本来人と人を結びつける社会的機能を有しており、食を通
じた交流もヘルシーエイジングには重要である。
