基調講演

座長
東京大学 名誉教授
清水 誠 


「第4次食育推進基本計画」

農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課長
清水 正雄

 

 
  2005 年に「食育基本法」が制定され、国は15 年にわたり多様な関係者とともに食育を推進してきた。
社会全体で高齢化が進行する中で、健康寿命の延伸や生活習慣病の予防は引き続き国民的課題であ
り、栄養バランスに配慮した食生活の重要性は増している一方で、食に関する国民の価値観や暮らし
の在り方は多様化、健全な食生活を実践することが困難な場面が増えてきたり、地域の伝統的な食文
化が失われていくことが危惧されたりしている。
 また、食の供給面からは、農林漁業者や農山漁村人口の高齢化・減少が進む中、食料自給率が低下し
ている一方で、大量の食品ロスが発生し、異常気象に伴う自然災害の頻発等地球規模の気候変動の影響
が顕在化していることなどがあり、食の在り方を考える上で環境問題を避けられなくなっている。
国際的な観点からも、2015 年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」に、
栄養改善や教育、持続可能な生産消費形態の確保などの食育に関係の深い目標があり、食育はSDGs
の達成にも寄与するものである。
 さらに、昨年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響は、人々の生活のみならず、行動・
意識・価値観にまで波及した。社会のデジタル化の進展も踏まえ、食育についてもデジタルツールを
積極的に活用していくことが必要となっている。
 こうした情勢を踏まえ、令和3(2021)年度からおおむね5年間を計画期間とする第4 次食育推進
基本計画が作成された。
 重点事項の一つとして、「持続可能な食を支える食育の推進」が掲げられ、健全な食生活を送る上
での基盤として、持続可能な環境が不可欠であることから、食育関係者を含む国民が、食を支える環
境の持続に資する食育等を推進していくこととなった。環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民
を増やすといった目標も追加され、消費者の行動変容につながる食育が期待されている。また、農林
水産省では「みどりの食料システム戦略」がとりまとめられ、各種政策のグリーン化に取り組むこと
とされたところであり、これらの取組とも連携していくこととなっている。
 同じく、重点事項の一つとして、「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進も掲げられ、
「新しい生活様式」に対応し、「新たな日常」においても食育を着実に実施すべく、新しい広がりを
創出するデジタル化に対応した食育を推進することとしており、既にその萌芽も散見される。 

  

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