講演2

座長
愛知学院大学 心身科学部 健康栄養学科 特任教授 
大澤 俊彦


「日本食の健康有益性~主食の意義を考える」
東北大学大学院 農学研究科 生物産業創成科学専攻 食品機能健康科学講座食品化学分野 准教授
都築 毅


 
 日本人の平均寿命は延び続け、世界有数の長寿国として知られている。日本人が健康長寿である理 由は、欧米人と異なる特徴的な食生活に起因すると考えられている。日本人の食事「日本食」は、米 を主食とし、多様な食素材を使用し、健康維持に有効な成分を数多く含んでいると考えられている。 日本食中の特徴的な食品に含まれる個々の成分が生体に与える影響を検討した試験は、これまでにも 数多くあったが、食事のメニューまるごとを総合して検討した研究はほとんどなかった。そこで、現 在の日本食と米国食を再現し、ラットにこれらの食事を与えた後、生体への影響の差異を調べ、日本 食はストレス性が低く、エネルギー消費を促進し、健康維持に有益であることを示した。一方、現在 の日本食は欧米の影響を受け「食の欧米化」が進行し、また、生活習慣病の罹患率が増加している。 よって、どの時代の日本食が健康維持に有益かを検討した。様々な年代の食事献立を作成し、それら を試験飼料としマウスに摂食させたところ、1975 年の日本食摂取により、内臓脂肪が減少し、エネ ルギー消費が亢進することを示した。長期摂食させた試験でも、1975 年日本食は、肥満抑制効果を 有し、さらに、老化による脂質・糖質代謝調節機能の低下を防いで脂肪肝や糖尿病の発症リスクを低 減し、寿命をも延伸することが示され、ヒト臨床試験においても1975 年型日本食は、高い健康有益 性を示すことが明らかとなった。 この要因を探るべく様々な検討を行ったところ、何か1 つの成分の効果で良い効果を得るのは難し く、複数成分の相互作用が重要であると示唆された。1975 年の日本食は他の年代の日本食と比較し て使用している食材の種類が豊富であった。そして、1975 年の日本食の特徴を、過去の研究結果を もとに検討し、5 つの要素(多様性・調理法・食材・調味料・形式)が重要であることを見出した。 この中で「形式」とは主食と汁物のセットが整っていることが重要であることを意味している。近年、 主食を極端に減らす糖質制限食が内臓脂肪を効率的に減らすことができるとして注目され、各所で実 践されている。糖質制限食は、低炭水化物・高タンパク質食として知られており、食事の量を減らす ことなく炭水化物の量を制限し、その分をタンパク質や脂質などで補う食事である。しかし、糖質制 限食の長期摂取における安全性に関してはほとんど報告されていない。そこで、長期間の糖質制限が 老化にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、老化促進モデルマウスを用いて、1 日3 食の 主食を抜かすような糖質制限食が老化にどのような影響を与えるかを検討したところ、糖質制限食は マウスの老化を促進し、寿命を短縮することが示された。以上より、食事における主食は、単なるエ ネルギー補給ばかりでなく、食事全体のバランスを整え、健康維持に重要な要素であることが示唆された。


 

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