講演1

座長
東京大学 名誉教授
清水 誠


「慢性腎臓病におけるたんぱく質栄養」
徳島大学大学院 医歯薬学研究部 臨床食管理学分野 教授 
竹谷 豊
 

 
 慢性腎臓病は、蛋白尿や糸球体濾過量の低下などの腎障害が3 か月以上持続している疾患であり、わが 国では、成人の8 人に1人が罹患していると推計されている。終末期になると腎代替医療が必要となる ことに加え、進行に伴い心血管疾患の発症リスクが高くなることから、腎機能障害の進行と心血管疾患発 症を予防することは、慢性腎臓病の治療において最も重要な課題である。慢性腎臓病の治療において、栄 養管理は重要である。従来、腎臓病食とされるものは、保存期の慢性腎臓病患者を対象として、高エネル ギー、低たんぱく質、食塩制限を基本に、病態に応じて、リン、カリウム、水分の制限とされている。低 たんぱく質食は、適切に実施すれば腎機能障害の進行抑制が期待できる。一方で、十分なエネルギー摂取 が伴わなければ、栄養不良を招く。近年、慢性腎臓病に伴うprotein-energy wasting(PEW)が、慢性 腎臓病患者の予後不良因子とされている。したがって、慢性腎臓病患者においては、低たんぱく質食で治 療するにしても、PEW を招かないことが重要である。一方、終末期の維持血液透析患者においては、低 たんぱく質食よりもたんぱく質を十分に摂取し、高リン血症が管理されていれば死亡率が低いことが示さ れた。高リン血症は、慢性腎臓病に伴う全身性の骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の主要な背景因子 であり、総死亡率や心血管疾患発症に関与する。食事からのたんぱく質摂取量とリン摂取量には強い正の 相関関係があることから、低たんぱく質食は、低リン食とも言える。低たんぱく質食の効果の一部は、こ のリン制限によりもたらされていると考えられるが、高リン血症が問題となる維持血液透析患者では、低 たんぱく質食がPEWの原因となる。従って、たんぱく質を摂りつつ、リンを制限する必要がある。リン 制限のために、リン/たんぱく質比、植物性食品/動物性食品、あるいはリン吸収率の高い食品添加物に 着目した栄養管理法が提唱されてきた。我々は、最近、グリセミック・インデックスの考え方に基づき、 食後の血清リン濃度上昇曲線下面積を比較することで、食品中のリンの生体への負荷を評価するための指 標としてリン負荷指数を開発した。リン負荷指数を活用することで、必要以上にたんぱく質を制限するこ となく、効果的な高リン血症の栄養管理ができると期待される。本講演では、食事中のたんぱく質とリン を考慮した慢性腎臓病の管理について概説する。

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