メールマガジン「Nutrition News」 Vol.194
「拡がる新型コロナウイルス感染症 管理栄養士・栄養士の役割」

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、世界保健機関(WHO)は3月11日に「パンデミック(世界的な大流行)」を宣言しました。日本においても4月16日に全都道府県に対し緊急事態宣言が出されました。長引く“自粛生活”に日本中で疲れの色も見えてきているようです。

 そのような中、タレントやスポーツ選手などが動画を配信したり、企業が現状を踏まえた多様なサービスを展開したりと、様々な分野でこの苦境を乗り越えるための取り組みが行われ、不安な日々を過ごす人々を元気づけています。感染拡大に終息の兆しが見えない今、それぞれの立場で“できること”に積極的に取り組むことが求められています。

新型コロナウイルスとは

 コロナウイルスは遺伝情報としてRNAを持つRNAウイルスの一種です。表面に突起のある球形をしており、その形態が王冠に似ていることから“corona”(ギリシャ語で王冠の意)と呼ばれるようになりました。

 ヒトに感染するコロナウイルスとしてはこれまでに6種類が確認されています。そのうち4種類は日常的に感染する風邪のウイルスです。風邪の原因の10~15%(流行期には35%)を占めるのがこの4種類のコロナウイルスであり、比較的ありふれたウイルスであると言えます。2種類は動物からヒトに感染し重症肺炎を引き起こすコロナウイルスで、2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年に発生した中東呼吸器症候群(MARS)のウイルスがこれにあたります。現在問題となっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、これら6種類のコロナウイルスや動物に感染するとして知られているコロナウイルスとは異なるものです。

 新型コロナウイルスは一般的に飛沫感染、接触感染によって感染します。自分自身では増殖できず、粘膜などの細胞に付着して体内に入りこむことで増殖することができます。感染した際の症状としては、発熱や呼吸器症状が1週間程度続き、強い倦怠感を訴えるケースが多く見られています。罹患しても約8割は軽症で、治癒することも多いと報告されています。一方で、季節性インフルエンザと比べて死亡リスクが高く、高齢者や基礎疾患のある方では重症化するリスクが高いと言われています。        

新型コロナウイルス感染症予防の基本

① 手洗い

ウイルスは健康な皮膚には入りこむことができず、表面に付着するだけと言われています。また、物の表面に付着したウイルスは、時間が経つと増殖能力を失います(種類によっては24~72時間程度は感染する力を維持するといわれています)。そのため、手洗いはウイルス感染を防ぐためにとても有効な方法です。流水で洗うだけでもウイルスを流すことができますし、石鹸を用いた手洗いであればコロナウイルスの膜を壊すことができるため更に有効です。汚れの残りやすい指先、指の間、手首、手のしわなどを念入りに洗うことが重要です。

くしゃみや咳が出る時には、その飛沫にウイルスを含んでいる可能性があります。人が集まるような場所では、マスクを着用して口や鼻を覆うこと、マスクがない時にはティッシュやハンカチで口や鼻を覆うこと、それ以外のとっさの時には袖で口や鼻を覆うことなどの「咳エチケット」で感染を広げないようにすることが重要です。

“3密”と言われる「換気の悪い密閉空間」「多くの人が密集する場所」「互いに手を伸ばしたら届く距離での会話等」という条件下では感染を拡大させるリスクが高いと言われています。感染の拡大を最小限に食い止めるためには、不要不急の外出自粛など“3密”を回避するための行動が求められます。

管理栄養士・栄養士だからできることとは?

 新型コロナウイルス感染症の対策として個人でできることは、他にもあります。それは、日頃からの健康管理です。十分な睡眠やバランスのよい食事などによって健康を保つことがウイルスに対する抵抗力(免疫力)を高めることにつながるからです。“Stay Home”が叫ばれる今だからこそ、自宅での食事内容を改めて見直し、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物をまんべんなく食べ、水分補給も十分に行うように心がけたいものです。特に、休校・休園の措置により給食がなくなると、子どもたちの栄養が偏ることも懸念されます。菓子類はほどほどに、一般的に不足しがちな野菜や牛乳・乳製品を意識して摂ることが大切です。

 とはいえ、バランスの良い食事が大切と分かっていながらも、1日3回の食事作りがストレスとして重くのしかかっている方も多いでしょう。そんな今こそ、健康・栄養についてのプロフェッショナルである管理栄養士・栄養士の腕の見せどころです。時間や手間をかけずにできる栄養バランスの良いメニュー、作り置きできるおかず等の提案は、食事作りを担う多くの方に貢献できるでしょう。職域や個人の専門性などによって、他にも“できること”がたくさんあるのではないでしょうか。

 また、管理栄養士・栄養士の役割として、科学的根拠のない情報による混乱を防ぐために、適格に情報収集を行い、正しい情報を伝えていくことも挙げられます。最近ではインターネットを中心に、「新型コロナウイルスにビタミンDが効く」等の情報が見られましたが、国立健康・栄養研究所は現時点でそのような効果は確認されていないとし、これらの情報に対する注意喚起をしています。公益社団法人日本栄養士会は、新型コロナウイルスに対する基本姿勢を4月3日に動画で、4月8日に文章で表明しました。また、4月10日には「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」として、新型コロナウイルスへの対応についてのQ&Aがまとめられました。このような最新の情報に常にアンテナを張り巡らせておくことが大切です。

 

 自粛の波にのまれて気持ちも落ち込みがちな時ですが、この未曾有の事態に立ち向かうポジティブな姿勢を持ち続けたいものです。社会全体で助け合い、励まし合いながら、この困難を乗り越えていきましょう。

 

※当記事は2020年4月末現在での情報を元にして作成したものです。

参考

▼国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html#tokucho

▼新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

▼コロナウイルスとは(国立感染症研究所)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html

▼新型コロナウイルスについて(国立健康・栄養研究所)

https://www.nibiohn.go.jp/eiken/corona/

▼中村会長のメッセージ「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」(日本栄養士会)

https://www.dietitian.or.jp/important/2020/4.html

 

 

 

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