2024年5月1日発行

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.246
厚生労働省が睡眠に関する最新のエビデンスに基づくガイドを公表

 私たちにとって、睡眠は人生の長さの約1/3を占める重要な活動です。睡眠には、脳や体のメンテナンス、記憶の整理、免疫機能の向上など健康の維持・増進に必要不可欠な役割があり、睡眠が悪化することで様々な疾患の発症リスクが増加することが知られています。

 良い睡眠のためには、十分な睡眠時間だけでなく、目覚めた時に体が休まったと感じられるような質の高い睡眠も重要です。この“体が休まった感覚”は「睡眠休養感」と呼ばれ、睡眠の質を反映する指標として近年注目されています。

休まっていない現代の日本人

 これまで、睡眠については「健康づくりのための睡眠指針2014」において12箇条の指針が示されていました。しかし、策定から約10年が経過した現在の日本人の睡眠の状況を見てみると、睡眠による休養を十分とれていない人の割合が増加し(※1)、1日の睡眠時間についても30~50歳代の男性、40~50歳代の女性の4割以上で平均6時間未満(※2)となっているなど、質(睡眠休養感)・量(睡眠時間)ともに十分であるとはいえません。

 このような状況を踏まえ、良い睡眠につながる生活習慣を身につける手立てとなることを目指し、睡眠に関する最新の科学的知見に基づいた「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が策定されました(令和6年2月に公表)。

 夜間に実際に眠ることのできる時間は、15歳前後で約8時間、25歳で約7時間、45歳では約6.5時間、65歳では約6時間と、加齢に伴って減少することが報告されています。一方で、夜間に床の上で過ごす時間(床上時間)は45歳以上で徐々に増加し、75歳では7.5時間を超える傾向があります。つまり、若い世代では床上時間の不足から睡眠不足になりやすく、高齢の世代では必要な睡眠時間に対して床上時間が過剰になりやすいことが考えられます。本ガイドでは、このような年代による違いも踏まえ、適正な睡眠時間と睡眠休養感を確保するための推奨事項が「成人」「こども」「高齢者」と年代別にとりまとめられています。

成人の睡眠のポイント

 短い睡眠時間は、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクや死亡リスクを高めることが知られています。現時点での科学的知見から、この世代では6~8時間の睡眠が適正とされており、本ガイドにおいても、6時間以上の睡眠を確保することを推奨しています。 なお、平日の睡眠不足を休日に取り戻そうとするいわゆる“寝だめ”は、体内時計のリズムの乱れによって時差ボケのような症状が出る「社会的時差ボケ(Social Jetlag)」につながります。社会的時差ボケは、慢性的な睡眠不足による健康への悪影響と頻繁な体内時計のずれによる健康への悪影響の両面を併せ持っており、肥満や糖尿病などの生活習慣病、脳血管障害や心血管疾患、うつ病などの発症リスクとなることが報告されています。休日に長時間の睡眠が必要と感じるのは平日の睡眠時間が不足しているサインであり、十分な睡眠時間確保のための睡眠習慣の見直しが必要です。

 また、睡眠休養感の低下は肥満や糖尿病などの代謝機能障害のみならず、うつ病の発症にも関連することが報告されています。食習慣の乱れや運動不足など、睡眠の質の低下につながる生活習慣や睡眠環境を見直し、睡眠休養感を高められるよう努めることが大切です。

こどもの睡眠のポイント

 睡眠には脳と身体を成長させる役割があることなどから、こどもにとって適切な睡眠時間の確保はとても重要です。心身機能の回復や成長に必要な睡眠時間として米国睡眠医学会が提唱する基準を参考に、本ガイドでは小学生で9〜12時間、中学・高校生で8〜10時間を睡眠時間の目安とすることを推奨しています。

 また、思春期頃になると、課外活動やスマートフォンの利用機会なども増え、夜ふかし・朝寝坊になりやすくなります。起床時の日光浴、朝食の摂取、運動習慣の定着などを意識して、夜更かしが習慣化するのを避けることが大切です。

 

高齢者の睡眠のポイント

 睡眠不足による健康への悪影響が問題となる成人と異なり、高齢者では長時間睡眠による健康リスク(死亡リスク)の方が強く表れることが明らかになっています。また、この世代では長い床上時間と総死亡率の増加との関連が示されていることなどから、睡眠時間よりも床上時間を重視することが大切です。これらを踏まえ本ガイドでは、「1週間の平均睡眠時間(実際に眠っている時間)+30分程度」と「床上時間が8時間以上とならないこと」の2点を床上時間の目安として必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。
 
 また、65歳以上の高齢世代では、床上時間が長く、且つ睡眠休養感が欠如している場合に死亡リスクが増加することが米国の研究で示されていることなどから、日中に太陽の光を浴びること、習慣的に運動すること、社会や他者とのつながりを持つことなどによって昼夜のメリハリをつけ、良質な睡眠を確保することも大切です。

 

健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)より


 なお、睡眠には個人差があるため、本ガイドに記載されている内容はすべての人に当てはまるとは限りません。例えば、10時間を超える長い睡眠を必要とする人(ロングスリーパー)の場合、ガイドに沿って睡眠時間を短くすることで逆に睡眠不足を招く可能性があります。実際に取組を進める際には、このような個人差を踏まえ、可能なものから行っていくことが重要です。

 

 

 


詳しくはこちらをご覧ください

睡眠対策 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html


参考

e-ヘルスネット「休養・こころの健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart

 

 

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