メールマガジン「Nutrition News」 Vol.245    2024年4月1日発行
2021年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
スペルミジンは加齢による骨格筋萎縮を抑制しうるか?
筑波大学大学院 骨格筋分子生理学研究室

岩田 知大 先生

要旨

加齢による骨格筋萎縮(サルコペニア)は深刻な課題である。近年、主要な筋肥大分子シグナルであるmTORが加齢によって活性化し、その抑制がサルコペニアを改善するという意外な結果が報告された。mTORによって負に制御されるオートファジーは、細胞内環境の維持に重要な不要物処理機構である。本研究では、mTORではなく、オートファジーの減少がサルコペニアの根本的な原因であり、効果的な治療標的になりうるという仮説のもと、mTOR抑制物質「ラパマイシン」と、ヨーグルトなどに豊富に含まれmTOR非依存的なオートファジー活性化が報告されている物質「スペルミジン」の投与が加齢マウスの骨格筋に及ぼす影響を比較・検討した。本研究において、スペルミジンはラパマイシンより有意に加齢による筋線維横断面積の減少を抑制した。また、タンパク質発現量解析から、ラパマイシン投与によってmTORシグナルが不活性化され、スペルミジン投与によっても中程度に不活性化したことが示された。さらに、タンパク質発現量の相関分析の結果から、ラパマイシンはスペルミジンと異なり選択的オートファジーのみならず、プロテアソーム系及びバルク(非選択的)オートファジーなどの分解経路を促進する可能性が示唆された。以上の結果より、スペルミジンは、ラパマイシンと異なるメカニズムでオートファジーを活性化することで、より効果的にサルコペニアを改善することが示唆された。

 

 

 

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