2024/04/01

Vol.245 (3) 健康・栄養に関する学術情報 「牛乳・乳製品はカルシウムの供給源、骨の健康に貢献します」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.245     2024年4月1日発行
健康・栄養に関する学術情報
牛乳・乳製品はカルシウムの供給源、骨の健康に貢献します

 牛乳はカルシウムを多く含むことが知られ、骨の健康に良い食品として取り上げられます。特に日本人はカルシウム摂取量が少ないことから、その有用性は高いと考えらます。しかし、近年牛乳飲用量は減少してきており、その影響もありカルシウム摂取量も減少傾向にあります。その中で学校給食における牛乳提供には大きな意義があります。
 女子栄養大学の上西一弘教授による 論文「牛乳・乳製品と健康」から、牛乳・乳製品はカルシウムの供給源であり骨の健康に貢献するという論説部分を抜粋して紹介します。

カルシウム、骨の健康

▷牛乳は100mL 中に約110mg のカルシウムを含んでおり、重要なカルシウム供給源となっている。

▷牛乳のカルシウムは、吸収性にも優れていることが報告されている。日本人を対象とし、牛乳、小魚、野菜のカルシウム吸収率を評価した結果、牛乳のカルシウム吸収率は他の食品に比べて高い。その要因として、カルシウムの存在形態(可溶性カルシウムとして存在)、ビタミンDや乳糖によるカルシウム吸収促進、カルシウムの溶解性を高めるカゼインホスホペプチドが含まれることなどが考えられる。野菜のカルシウム吸収率が低いのは、野菜に多く含まれているシュウ酸がカルシウムと結合して不溶性のシュウ酸カルシウムとなるためで、シュウ酸含量の少ない野菜(ケールなど)では、カルシウム吸収率は高いことが報告されている。

表1 カルシウムの見かけの吸収率

▷玉置(1)は、牛乳・乳製品摂取と骨量・骨折発生率に関する疫学研究について検討し、次の3点を報告している。

①カルシウム摂取量が少ない日本では、思春期前の十分な牛乳・乳製品の摂取は骨量を増加させ、高い最大骨量獲得につながることが期待できる。

②十分な牛乳摂取は有経女性の最大骨量の維持に寄与し、閉経後の骨量減少を抑制する。高齢男性では、十分な科学的根拠はないが、十分な牛乳摂取が加齢による骨量減少を抑制することが期待できる。

③メタ解析の中高年男女全体において、牛乳摂取は骨折リスクと関連していないが、中高年男女で牛乳・乳製品摂取が極めて少ない場合は、骨折リスクが高まる可能性がある。

▷ 久保田ら(2)は、牛乳・乳製品の摂取と骨密度や骨折に関するエビデンスのレビューを行い、

①牛乳・乳製品の摂取だけでは、中高年期の骨量減少やその後の骨折を抑制する効果は強くなかった。

②しかし、週に1回以下の牛乳摂取のような極端に少ない摂取状況では大腿骨頸部骨折のリスクを上げる可能性が高い。 と示し、「日本人のカルシウム摂取量は少ないことから、骨の健康のためには従来通り、成人や高齢者に牛乳・乳製品の摂取を増やすことを勧めることが必要である。」と述べている。

▷ 国民健康・栄養調査(以前の国民栄養調査を含む)によるカルシウム摂取量の年次推移をみると、1945年当時のカルシウム摂取量は約250mg/日、1970年代には約500mg/日、1970年代からカルシウム摂取量はほぼ横ばいで推移し、一度も平均値で600㎎を超えたことはなく、近年は減少傾向にすらある。カルシウムの供給源である牛乳・乳製品のさらなる摂取が推奨される。

学校給食における牛乳提供の意義

▷最大骨量(人生で最も多い骨量)に達するのは18歳くらいといわれており、それまでの骨量増加が非常に重要となる。成長期の骨量増加には材料となる栄養素、特にカルシウムの摂取、骨に対する刺激(運動)の寄与が大きいと考えられる。日本では学校給食で牛乳が提供されていることが多い。

▷ 中学生、高校生の時期は成長の著しい時期であり、身長、体重はもちろん骨量も増加することから、この時期の骨量獲得が最大骨量に及ぼす影響は大きい。

表2 2002年および2016年カルシウムの摂取量平均値と摂取推奨量の対比

▷2016年では、男女ともどちらの年齢でも2002年と比べて約50~100㎎の摂取量の減少が見られる。 男女ともに7~14歳に対して15~19歳でカルシウム摂取量が200㎎近く減少するのは、学校給食による牛乳提供が無くなるからである。

▷ 小林ら(3)は、学校給食での牛乳提供が、児童・生徒の骨の健康にどのように役立っているかを検討し、学校給食の給食形態別(完全給食群、ミルク給食群、給食未実施群)で骨量測定の結果、小・中学生共に完全給食群で踵骨(しょうこつ)骨量(かかとの骨の骨量)が高いと報告している。さらに、給食以外の牛乳・乳製品の摂取習慣で、小・中学生いずれにおいても完全給食群の「毎日食べる」割合が高いことを示し、将来的に学校給食の提供がなくなる高校生以降においての牛乳・乳製品摂取の習慣化につながることが期待される。

最大骨量を獲得するのは高校生から20歳くらいまでの時期である。小学校、中学校での牛乳飲用の習慣を高校以降でも続けていくことが重要といえる。学校給食による牛乳提供の実績から考えても、この時期のカルシウム供給源としての牛乳飲用の意義は特に大きい。

食の豊かな日本にあって、カルシウムは数少ない摂取量の不足している栄養素の一つです。また、超高齢社会にある日本で骨の健康の維持は、フレイル予防の点でも重要です。何十年か経って高齢者になった時に、しっかりした骨でしゃんと立っていられるようにありたいものです。今からこつこつと牛乳・乳製品を摂ってカルシウムを取り入れておきたいですね。

引用文献

(1) 玉置淳子. 牛乳・乳製品と骨. 疫学. CLINICAL CALCIUM. 28(4), 17-25, 2018.
(2) 久保田恵, 上里加子. 牛乳・乳製品と骨. 総説. CLINICAL CALCIUM. 28 (4), 9-16, 2018.
(3) 小林奈穂, 塚原典子, 小築康弘ほか. 給食形態と児童・生徒の体格および食習慣との関係. 日本給食経営管理学会誌. 4, 87-95, 2010.

(参考)
詳細は下記論文をご参照下さい。
上西 一弘. 牛乳・乳製品と健康. 生活協同組合研究2019 525巻 p22-29.
本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
なお、本記事の表は論文中の記載をもとに作成しました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/consumercoopstudies/525/0/525_22/_article/-char/ja

ダノンジャパン株式会社 研究開発部 西田 聡

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