メールマガジン「Nutrition News」 Vol.241
健康・栄養に関する学術情報
妊婦のビタミンD栄養状態 ー欠乏状態の予測が可能にー

1980年代の南極オゾンホールの発見以降、太陽からの紫外線が危惧されるようになりました。浴びすぎると肌や目に悪影響がありますが、皮膚でビタミンDを生成するという良い働きもあります。日本の若年女性の間では、肌の美容を重視して紫外線を避ける風潮が広がり、その結果若年女性を中心にビタミンD不足や欠乏が広がってきています。また、日本人の妊婦は諸外国に比べ著しくビタミンD欠乏にあるとも報告されています。

国立環境研究所と順天堂大学の研究チームから、日本人の妊婦のビタミンD不足の状態を把握し、要因を推定、ビタミンD欠乏推定モデルを構築した研究が公表されました。2023年2月発表の最新報告を紹介します。

背景と目的

体内のビタミンD(以下VD)は食事から摂取されたVDと太陽紫外線(以下UV-B)照射により皮膚で生成されたVDに由来する。食事摂取目安量は1日8.5 μgが示されているが、UV-B照射による皮膚でのVD生成量には、季節、緯度、天候、時間、肌の色など様々な要因が関連しており、環境省、日本ビタミン学会、骨粗しょう症財団等の組織も単一の目安となる日光照射時間は示されていなかった。本研究では、日本人妊婦において食品からのVD摂取やUV-B暴露状態などを把握して、要因を推定し、VD欠乏推定モデルを構築した。

研究手法

研究結果と考察

また、UV-B強度とVD生成量との関係を調べた。実際のUV-B強度観測データをもとに、次のように1年を3つの期間に分けた。
  強UV-B月:5月、6月、8月、9月
  中UV-B月:4月、7月、10月
  弱UV-B月:1月、2月、3月、11月、12月

今後の展望

妊婦の多くは、推奨量以上のVDを食事やUV-B照射によって取り込んでいると推定されているにもかかわらず、血中VD濃度は全季節を通して欠乏状態であることが明らかになった。その原因として、妊婦においては摂取したVDの多くが胎児の骨の生成に消費されている可能性が考えられる。本結果で得られたロジスティック回帰モデルをもとに、妊婦にVD欠乏状況について情報提供することにより、妊婦のVD栄養状況が改善されることが期待される。また今後調査対象を、妊婦以外の女性や赤ちゃんにも広げていく。


お母さんがおなかにいる赤ちゃんのために一生懸命ビタミンDを届けてあげて、赤ちゃんの成長を支えているのですね。お母さんにビタミンDを十分供給するために、食べ物と皮膚に日光を浴びることが大切です。手のひらのような日焼けが気にならない場所を日に当てるといった工夫もいいかも知れません。お日さまの恵を受けて、お母さんと赤ちゃんが健やかでいられるといいですね。

 

(参考)

詳細は下記論文をご参照下さい。

Nakajima H, Sakamoto Y, Honda Y, Sasaki T, Igeta Y, Ogishima D, Matsuoka S, Kim SG, Ishijima M, Miyagawa K. Estimation of the vitamin D (VD) status of pregnant Japanese women based on food intake and VD synthesis by solar UV-B radiation using a questionnaire and UV-B observations. J Steroid Biochem Mol Biol. 2023 May;229:106272. doi: 10.1016/j.jsbmb.2023.106272. Epub 2023 Feb 10. PMID: 36775044.

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960076023000274?via%3Dihub

 

ダノンジャパン株式会社 研究開発部 西田 聡

 

 

  • ごはんだもん!げんきだもん!~早寝・早起き・朝ごはん~
  • ダノングループ・コーポレートサイト

ページトップへ戻る