メールマガジン「Nutrition News」 Vol.238
2021年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
ホモカルノシンの脳機能における生理的役割の探索、および新規なメカニズムのプレ/プロバイオティクス開発への期待
広島大学大学院 統合生命科学研究科

タナッチャポーン カムランシー 先生

要旨

 ホモカルノシンは、脳に高濃度で存在するジペプチドの1つであり、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)とヒスチジンから構成される。近年の研究では、ホモカルノシンによるホメオスタシス不全と脳疾患には関連性があることが示唆されている。しかし、ホモカルノシンの脳における役割についてはほとんど知られていない。したがって、ホモカルノシンが脳の機能に影響を与えるかどうかを調べるために、カルノシン合成遺伝子欠損マウス(CARNS1-KOマウス)と正常な野生型マウス(WTマウス)で様々な行動試験を実施した。本研究では、オープンフィールド試験、明暗移行(遷移)試験、強制水泳試験、ガラス玉覆い隠し行動試験、埋設食物試験を行い、マウスの自発運動活性、不安、抑うつ、強迫観念、嗅覚機能を評価した。その結果、CARNS1-KOマウスで、自閉症スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)に多くみられる多動、不安、抑うつ行動が認められることがわかった。ASD患者とADHD患者を対象とした先行研究においてGABA低値とホモカルノシン低値が報告されているため、今後、CARNS1-KOマウスにおいて社会性、動機、学習と記憶など、ASDADHDで見られるその他の中心的な特性についてさらに研究することは非常に興味深い。この所見に加え、明暗移行試験と強制水泳試験中、CARNS1-KOマウスはWTマウスに比べ糞粒が有意に多いという興味深い結果が得られた。この結果から、ホモカルノシンが不安または結腸運動の調節に関与している可能性が考えられた。さらに、プレバイオティクスとしてフラクトオリゴ糖を摂取すると、脳内のGABAとホモカルノシンが増加することが明らかになった。

 結論として、ホモカルノシン欠損CARNS1-KOマウスでは、多動、不安、抑うつ行動が認められることが明らかになった。本研究は、脳機能におけるホモカルノシンの役割についての新しい研究のきっかけとなり、脳の健康促進と脳疾患予防のための機能食の開発につながることが期待できる。

 

 

 

 

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