メールマガジン「Nutrition News」 Vol.224
2020年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
生活習慣病リスクとしての人工甘味料の長期使用:頭相反応に着目して
京都大学大学院 農学研究科 食品生物科学専攻 栄養化学分野

佐々木 努 先生

要旨

 頭相反応とは、糖の摂取に伴う「甘味刺激」と「糖の代謝効果」の間の条件付け関連学習により、甘味刺激だけでホルモン分泌が予期的に起こる現象である。血糖値が上昇する前にインスリンを予期的に分泌させることにより、血糖値の上昇を緩徐にして耐糖能を高める役割を担う。

 人工甘味料は、糖の代謝効果がなく、甘味刺激だけが得られるため、エネルギーの摂取過剰を抑制する目的で用いられる。しかし、人工甘味料の使用は、耐糖能の改善につながらない。その理由の一つとして、腸内細菌を変容させ耐糖能を悪化させることが 2014 年に報告された。

  関連学習としての頭相反応は、糖の代謝効果を欠く甘味刺激のみ(人工甘味料)を継続 して受けることにより、消去学習によって抑制される可能性が懸念される。その結果、糖を摂取した時に頭相反応が起こらず、耐糖能が悪化する可能性が考えられた。しかし、この概念は未検証であった。

  そこで本研究では、マウスにおいて頭相反応によるインスリン分泌(CPIR)を検出できる実験条件を確立し、1 M グルコース溶液と同等の嗜好性をマウスが示す人工甘味料溶液を同定した。そして、その人工甘味料溶液を2 日間自由摂取させると、CPIR が消失して耐糖能が悪化する可能性を見出した。

 以上より、腸内細菌叢の変容以外にも、人工甘味料の長期使用は耐糖能を悪化させるリスクがあることを明らかにした。

 

 

 

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