メールマガジン「Nutrition News」 Vol.223
2020年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
腸内細菌・口腔内細菌による高齢者の健康生活や認知機能への影響と日本食の予防効果
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター

佐治 直樹 先生

要旨

 高齢化社会を迎え、認知症の発症予防につながる研究が期待されている。特に、認知症と腸内細菌との関連が近年報告され、新規の認知症危険因子として注目されている。また、口腔内細菌と脳血管障害との関連も新たに報告されている。そこで、認知症と食事内容との関連や、腸内細菌・口腔内細菌との関連を調査した。

 日本食らしい食事パターンを点数で表示する「日本食スコア」がある。古典的には、ご飯、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒーの9品目で計算し、最近では、大豆・大豆製品、果物、きのこなどの食品を追加して判定することもある。研究参加者の食事内容について日本食スコアを用いて解析したところ、認知症患者では日本食スコアが低い傾向があり(P=0.09)、16項目の食品で詳細に追加解析すると認知症群で日本食スコアが有意に低値であった(P=0.003)。腸内細菌(エンテロタイプ)と日本食スコアとの関連では統計学的な有意差を認めなかった。口腔内細菌の解析では、認知症群の唾液検体から、Porphyromonas属の細菌が多く検出された。この菌種はアルツハイマー型認知症の関連菌として注目されており、興味深い結果であった。

 腸内細菌は認知症と関連があり、その機序には腸内細菌の代謝産物が関与する。口腔内細菌も同様の機序で認知症に関係するかもしれない。腸内細菌と口腔内細菌の解析結果を統合し、食品による影響も考慮して、認知症との関連をさらに調査する必要があるだろう。

 

 

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