メールマガジン「Nutrition News」 Vol.214
「中年期の代謝の低下はゆるやか!?国際的な研究チームがヒトの生涯にわたる総エネルギー消費量の変動を明らかに」

 国立健康・栄養研究所は、令和3年8月13日、1日に必要なエネルギーの加齢による変動についての研究結果を公表しました。この研究は、エネルギー代謝を専門とする世界の研究者が協力して2014年から行われている国際プロジェクトで、29ヵ国の生後8日から95歳までの6,600人以上のデータから、ヒトの生涯にわたる総エネルギー消費量について分析しています。                         

身体活動等も含めた”総エネルギー消費量”を分析

 ヒトは、成長、生命維持、身体活動などに食事からのエネルギーを利用します。しかし、これまでの大規模研究では、生命維持に必要なエネルギー量(基礎代謝)のみが測定されてきました。私たちが消費するエネルギーのうち、基礎代謝が占める割合は5070%程度です。1日に必要なエネルギーを考えるためには、基礎代謝のみならず消化・吸収や身体活動なども含めた総エネルギー消費量を明らかにすることが重要です。

 そこで、研究チームは、基礎代謝、食事誘発性体熱産生、身体活動によるエネルギー消費量の合計が算出できる「二重標識水法」と呼ばれる手法を用いて、ヒトの生涯にわたる総エネルギー量を分析しました。

総エネルギー消費量はダイナミックに変動する

 その結果、総エネルギー量の絶対値は10代後半で最も高く、男性で3,415±605kcal/日、女性で2,480±478kcal/日と、基礎代謝の約1.9倍に相当する値を示しました。総エネルギー消費量は、その後わずかに低下し、60代まではほぼ一定の値を示しました。

 また、これを体格で調整して比較したところ、乳児が最も高い代謝率を有していました。これは、乳児がその体格から予想されるよりもはるかに多くのエネルギーを必要とし、この時期の十分な食事摂取がその後の生存や健全な成長のために重要であることを示唆しています。

 中年期の代謝の減速はゆるやかで、60代以降で年に0.7%のわずかな減速がみられるものの、3050代では代謝は減っていませんでした。4050代にみられるいわゆる“中年太り”を考えると予想外ともいえる結果ですが、これにより、中年期におけるウェスト周囲径の増大の理由は、総エネルギー消費量の減少だけでは説明がつかず、他のメカニズムも関与していることが示唆されました。

 一方で、90代では4050代に比べて総エネルギー消費量が約26%少なくなっていました。

               図 年齢ごとの総エネルギー消費量

                      国立健康・栄養研究所プレスリリースより

 これらの結果は、ヒトの生涯にわたる細胞・組織の代謝が加齢にともなってダイナミックに変動することを示しています。

 このように、ヒトの総エネルギー消費量を明らかにすることは、食事摂取基準の策定においても重要な知見となるほか、将来における世界の食糧問題の解決法を探る上でも重要だと考えられ、研究のさらなる発展が期待されています。

                                    

参考

詳細は下記をご参照下さい。

1日に必要なエネルギーは加齢に伴いダイナミックに変動する ~29カ国6600人超が対象の国際共同調査で判明~(国立健康・栄養研究所)

https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/info_ronbun20210813.html

 

 

 

 

 

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