メールマガジン「Nutrition News」 Vol.208
健康・栄養に関する学術情報
体内のリン濃度はどのような仕組みで一定に保たれているのだろう?

 

リンは核酸、細胞膜、ATPなどの構成因子として細胞機能をつかさどる重要な働きをする一方で、カルシウムとともに骨形成の主役を担う重要な栄養素です。現在の日本人の摂取状況は充足しており、むしろ過剰摂取が懸念されています。また、透析期の慢性腎障害では腎臓からのリンの排泄量が低下するため、体内にリンが貯留します。それにより、ホルモン異常、骨代謝異常、血管の石灰化などの全身性の異常が見られ、骨折、心血管疾患、最終的には死亡のリスクも高まるので摂取制限が必要となります。(2020年ダノン健康栄養フォーラ講演紹介記事参照https://www.danone-institute.or.jp/mailmagazines/backyear/13384.html

健常時には体内のリン酸濃度は一定に保たれていますが、どのような機構で恒常性が維持されているか、またその破綻について解説した論文を紹介します。


以下の項目について、次のような内容を詳しく解説しています。

1. はじめに

2. 血中リン濃度調節機構
リン出納は腸管吸収、骨代謝(骨形成・骨吸収)、腎臓での排泄と再吸収によりなされる。3タイプのリントランスポーターが各臓器ごとに発現  している。調節因子として副甲状腺ホルモン、ビタミンDとともに骨から分泌されるFibroblast growth factor 23(FGF23)が近年注目されている。

3.リントランスポーター遺伝子異常および調節因子の異常によるリン恒常性維持機構の破綻
1) リントランスポーター遺伝子異常
いくつかの遺伝性疾患(ファンコーニ症候群、肺胞微石症、高カルシウムを伴う低リン血症性くる病、特発性大脳基底核石灰化症など)でトランスポーター遺伝子異常との関連が明らかにされている。
2) 液性因子が関わるリントランスポーター調節異常
遺伝性リン代謝異常疾患の原因遺伝子同定によりリン調節因子の分子同定がなされている。FGF23などの調節因子を分泌する骨細胞の内分泌細胞としての役割も注目されている。

4. リン代謝調節因子の役割と機能
遠位尿細管に発現するKlotho蛋白質がFGR23の共受容体となり、リントランスポーターの発現や機能を抑制することでリン利尿作用をもたらすものと考えられている。

5. 慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)とリン代謝破綻
CKDの場合には血中リン濃度の上昇はステージ後半で生じるが、GFRの低下や異所性石灰化は早期から進行しており、低リン食によるリン制限はCKDの進行を抑制する。

6. おわりに


参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

辰巳佐和子・金子一郎・瀬川博子・宮本賢一
「生体内リン恒常性維持機構―多臓器連関制御」
Drug Delivery System 29: 408-416, 2014

本論文はオンライン公開されており、無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/29/5/29_408/_pdf/-char/ja

 

 

 

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