メールマガジン「Nutrition News」 Vol.201
健康・栄養に関する学術情報
私たちは生れた時は無菌だけど、どのようにして腸内細菌叢は形作られるの?

 

胎児の腸内は基本的に無菌状態です。腸内細菌叢は新生児期に形成され、加齢とともにその構成が変化します。一般的には、酸素があっても発育できるEnterococcusStaphylococcus、大腸菌を中心としたEnterobacteriaceaeなどの通性嫌気性菌が最初に腸内に定着し、その後腸内の嫌気度が高まり、ビフィズス菌やBacteroidesClostridiumなどの偏性嫌気性菌が出現します。中でもビフィズス菌は、健康な新生児の場合、生後数日~2週間ほどで腸内の最優勢菌群となり、その状態は離乳時期まで維持されます。離乳食の開始とともに腸内細菌叢の構成は大きく変動し、食事内容が成人同様となる3歳頃には腸内細菌叢の構成も成人に近づいてきます。

新生児は、母乳及び育児用粉乳から栄養とIgA抗体などの防御因子を受け取っていますが、筆者らの研究により、母親の腸内に常在するビフィズス菌も新生児の腸管へ伝播することが菌株レベルで証明されました。この結果は、ビフィズス菌以外の腸内細菌も伝播することを示唆しています。腟内細菌叢と早産の関係も報告されていることから、良好な腟内及び腸内細菌叢の維持は、子どもにとっての贈り物とも言えます。

では、帝王切開で出生した乳児はどこからビフィズス菌を獲得するのでしょうか? 同じ病院で出生した乳児のビフィズス菌を比較したところ同一株は単離されず、病院環境や医療従事者からビフィズス菌が水平伝播された証拠も得られませんでした。さらに、ビフィズス菌がまったく検出されない乳児も少数ながら存在し、その健康状態は他の乳児と変わりません。誕生から終末まで、大多数のヒトの腸管に常在しているビフィズス菌の酢酸産生以外の重要な役割は完全には解明されていません。乳児の毒素産生性病原細菌の定着率が成人よりも高く、且つ菌数も高く保持されているにも関わらず無症状が保たれる理由も未だ明らかにされておらず、これら多くの事象が今後の研究課題となっています。


参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

牧野博ら 「新生児・乳児期の腸内細菌叢とその形成因子」
腸内細菌学雑誌 第33巻 第1号 15-25 (2019)

 本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/33/1/33_15/_pdf

 

 

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