メールマガジン「Nutrition News」 Vol.141
2014年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
乳製品摂取と幼児の齲蝕リスクとの関連に関する前向きコホート研究
福岡大学医学部衛生・公衆衛生学
現勤務先:愛媛大学大学院 医学系研究科 疫学・予防医学講座  

田中 景子 先生
 ヒトの歯牙は、胎生7週頃に歯胚形成が始まり、13週頃から石灰化が始まります。そして、石灰化後の歯牙は、構造的に比較的安定しています。そのため、母親の妊娠中の栄養摂取等も含めた胎内環境は、子の歯牙の発生、形成、石灰化に影響を及ぼしていると考えられます。ビタミンDは、血液中のカルシウムやリンイオン濃度を適切に調整することで、骨や歯牙の正常な石灰化に重要な役割を果たしています。ビタミンDと齲蝕との関連に関するこれまでの研究は、主にビタミンD欠乏に着目し、ビタミンDサプリメントの齲蝕予防効果に焦点が当てられていました。しかも、第一次および第二次世界大戦の間に実施された研究が多く、現在とは、健康状態、栄養摂取状況、生活習慣等が大きく異なっています。近年におけるビタミンDと齲蝕との関連に関する観察疫学研究は非常に少なく、ビタミンDの齲蝕へ与える影響について、エビデンスを蓄積する必要があります。
 

要旨

今回、我々は、出生前開始前向きコホート研究である九州・沖縄母子保健研究(Kyushu Okinawa Maternal and Child Health Study:KOMCHS)のデータを活用し、妊娠中の母親のビタミンD摂取と子の齲蝕リスクとの関連について解析した。
方法:本研究は1210組の母子を対象とした前向きコホート研究である。自記式食事歴法質問調査票を用いて妊娠中の食事習慣を評価した。母子健康手帳から、3歳児健康診査時の口腔内診査データを、母親に我々の質問調査票に転記頂くことで齲蝕の情報を得た。1歯以上の齲蝕経験歯を保有している場合を齲蝕有りと定義した。
結果:母親の妊娠中ビタミンD摂取の第一4分位を基準にすると、第二4分位、第三4分位、第四4分位の調整済みオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ、1.06 (0.72–1.56)、 0.53 (0.34–0.81)、及び 0.67 (0.44–1.02)であった。母親の妊娠中のビタミンD摂取と子の齲蝕との間には有意な負の量-反応関係を認めた (傾向性P 値 = 0.01)。
結語:妊娠中の母親のビタミンD摂取が多いことは、子の齲蝕に予防的であるのかもしれない。

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