メールマガジン「Nutrition News」 Vol.138
2014年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
抗食品アレルギーワクチンへの乳酸菌の利用
東京農工大学大学院・農学研究院  

好田 正 先生
 アレルギーは体外から侵入する抗原に対する過剰な免疫応答により誘導される疾患ですが、通常は食品に対して免疫系は応答しません。この現象は経口免疫寛容と呼ばれ、日々多量に体内に取り込まれる食品に対して不要な免疫応答を引き起こさないための免疫系の特殊な仕組みです。一方で、経口免疫寛容の誘導機構は明らかでなく、その破綻は食品アレルギーの原因の一つであると考えられています。そのため、過去の多くの研究において、破綻した経口免疫寛容を正常に誘導し直すことで食品アレルギーを治療する試みが食品アレルギー患者に対して実施されてきたものの、その有効性を示す報告は極めて少ないのが現状です。
 

要旨

 我々はこれまでに卵白アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)に対する食品アレルギーモデルマウスを用いて、食品アレルギー状態下においても経口免疫寛容は正常に誘導されていること、および事前にOVA分解物を摂取させて経口免疫寛容を誘導するとその後に未分解なOVAを摂取させても食品アレルギーは誘導されないことを明らかにした。
 OVA分解物をワクチンとして広く応用するためには、有効な効果を得るために必要なOVA分解物の摂取量を低減化することが今後の課題となるため、より少量で効果を得ることの出来るアジュバントの開発が必須である。そこで、本研究では過去に経口免疫寛容の促進効果が報告されている乳酸菌に着目し、分解抗原を用いた抗食品アレルギーワクチンのアジュバントとして利用可能な菌株を探索し効果を実証することを目的とした。
 本研究では、 BALB/cマウスにOVAのトリプシン分解物とともに各種乳酸菌を経口投与しOVAで免疫した後、脾臓細胞をin vitroで刺激して増殖応答を解析することで経口免疫寛容を促進する乳酸菌1菌株を選抜した。また、OVA特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウスにOVAの分解物とともに選抜した乳酸菌を経口投与した後にOVAによる食物アレルギーを誘導し、血中IgE量でアレルギーの程度を評価したところ、選抜した乳酸菌株をアジュバントとして用いることで、食品アレルギーの予防に必要な分解アレルゲンの量を約2分の1に減らすことに成功した。これは経口免疫寛容を用いた食品アレルギーの予防法の確立へ繋がる大きな成果である。

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