メールマガジン「Nutrition News」 Vol.115
2012年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
マスト細胞の終末分化の調節を介したプロバイオティクスの新たな抗アレルギー作用機序の解明
日本大学生物資源科学部 食品生命学科 食品生命機能学研究室
2012年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
マスト細胞の終末分化の調節を介したプロバイオティクスの新たな抗アレルギー作用機序の解明
日本大学生物資源科学部 食品生命学科 食品生命機能学研究室
高橋 恭子 先生
最近、腸内細菌による生体機能の調節が注目され、腸内細菌叢の構成が様々な疾病の罹患リスクに影響を及ぼすことが急速に明らかにされてきました。腸内細菌による生体調節作用の1つが抗アレルギー作用であり、腸内細菌叢の構成がアレルギーの罹患リスクに影響することが報告されています。しかし、その機構については未解明の部分が多く残されています。
アレルギーにおける炎症症状の誘導には、ヒスタミンなどの炎症物質を蓄えた顆粒を保持するマスト細胞が中心的な役割を果たします。
マスト細胞は骨髄中で幹細胞から分化し、未成熟な細胞として放出され、定着した末梢組織で終末分化を遂げます。マスト細胞は、アレルギー炎症を誘導する細胞として広く知られる一方、多彩な生理機能を有することが近年明らかにされてきています。特に、皮膚や粘膜など外界と接する組織に多く存在することから、マスト細胞の本来の生理的役割は感染防御であると考えられています。多量の腸内細菌が生息する腸管は、広大な粘膜面を有することから、生体内におけるマスト細胞のリザーバーとして機能すると考えられており、腸内細菌がマスト細胞の終末分化を制御することでマスト細胞の機能、特にアレルギー誘導活性と感染防御活性のバランスを制御している可能性が考えられます。
アレルギーにおける炎症症状の誘導には、ヒスタミンなどの炎症物質を蓄えた顆粒を保持するマスト細胞が中心的な役割を果たします。
マスト細胞は骨髄中で幹細胞から分化し、未成熟な細胞として放出され、定着した末梢組織で終末分化を遂げます。マスト細胞は、アレルギー炎症を誘導する細胞として広く知られる一方、多彩な生理機能を有することが近年明らかにされてきています。特に、皮膚や粘膜など外界と接する組織に多く存在することから、マスト細胞の本来の生理的役割は感染防御であると考えられています。多量の腸内細菌が生息する腸管は、広大な粘膜面を有することから、生体内におけるマスト細胞のリザーバーとして機能すると考えられており、腸内細菌がマスト細胞の終末分化を制御することでマスト細胞の機能、特にアレルギー誘導活性と感染防御活性のバランスを制御している可能性が考えられます。
要旨
本研究では、マスト細胞の終末分化に対する腸内細菌の影響とその機序を明らかにし、終末分化への作用を介したマスト細胞の機能の調節という新たな機序に基づくプロバイオティクスによるアレルギーの予防、症状緩和へ応用することを目的とし、マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)のin vitro分化系を用いて解析を行った。BMMCの成熟期間中Lactobacillusの超音波破砕菌体で刺激することにより、MyD88依存的に細胞内の顆粒形成が低減した。また、この際、転写因子C/EBPαの発現がMyD88依存的に増大していた。このような変化はBacteroidesの超音波破砕菌体の刺激では観察されなかった。そこで次に、マスト細胞の終末分化におけるC/EBPαの役割を明らかにするためにC/EBPαの誘導発現系を構築して解析した。その結果、C/EBPαの過剰発現により、顆粒形成が抑制された。さらに、微生物菌体刺激に対するケモカインMIP-2の産生がC/EBPαの過剰発現により増大した。これらの結果から、マスト細胞の終末分化過程におけるLactobacillus菌体の刺激により、C/EBPαの発現上昇を介してマスト細胞のアレルギー炎症誘導活性が低下し、感染防御活性が増大することが示唆された。したがって、特定の腸内細菌やプロバイオティクスが終末分化を調節することによりマスト細胞の機能のバランスを制御する可能性が示された。