メールマガジン「Nutrition News」 Vol.262 2025年9月1日発行
第72回栄養改善学会学術総会 ランチョンセミナー直前特別企画
「百寿者が全国平均の3倍!京丹後の長寿の秘密とは?(後編)」
百寿者の多い京丹後地域、その健康長寿の背景にはどのような要因があるのかを探るため2017年から始まった「京丹後長寿コホート研究」。8年が経過した現在、約1,200名もの地域住民が研究に参加しています。この研究のなかで、腸内細菌と健康長寿の関係について研究を進めている京都府立医科大学教授の内藤裕二先生に、これまでに明らかになったことや今後の取り組みなどについて伺いました。
「生物学的年齢」を指標とした研究
コホート研究としては、100歳を迎える人の腸内細菌叢とそうでない人の腸内細菌叢を比較できるのが理想ですが、それにはまだまだ時間が必要です。そこで内藤先生は、誕生してからの時間で決まる「暦年齢」ではなく「生物学的年齢」を指標として、腸内細菌叢と食・栄養素摂取を比較する研究を行いました。生物学的年齢とは、細胞や組織の状態に基づく“老化の進行度合い”を反映した年齢のことです。暦年齢よりも生物学的年齢が上回る場合、健康寿命は短くなると考えられます。生物学的年齢の測定には、血液中のバイオマーカーを分析するなどいくつかの方法がありますが、最先端技術を応用しながらより科学的なエビデンスを集積することも必要との考えから、内藤先生は現在、DNAのメチル化を解析する技術による生物学的年齢の測定も開始しています。
フレイルのリスクとなるものは?
基本的な日常生活活動や身体能力、精神心理などに関する32項目のデータからフレイル指標を計算して調べたところ、対象者786人のうち15.1%にあたる119人がフレイルと診断されました。そこで、非フレイル群(n=667)とフレイル群を比較したところ、様々な臨床的要因がフレイルのリスクとして抽出され、なかでもBMI(肥満)がフレイルの大きなリスクになっていることが分かりました。栄養素では、フレイル群で植物性たんぱく質の摂取が有意に少なかったほか、ミネラルではカリウムやマグネシウムなど、ビタミンではビタミンB群や葉酸などもフレイル群で摂取不足が見られました。また、フレイル群では食物繊維の摂取が有意に少なく、食材としてはその他の野菜(根菜など)と豆類の摂取不足が見られました。この食物繊維の摂取と腸内細菌叢、特に全身の健康によい影響を与えるとされる酪酸産生菌の占有率には有意な正の相関があることも確認されています。
このような研究の成果は、京丹後市が京都府立医科大学との共催で毎年開催する「京丹後長寿研究報告会」によって京丹後地域の住民を始めとした多くの人に還元されています。
国内外の研究者が集結「第1回世界長寿サミット」
2025年6月には、内藤先生が実行委員を務める「第1回世界長寿サミット」が京丹後市で開催されました。サミットには世界各地の研究者ら約200名が集結し、長寿に関する最新の研究成果が報告されました。
また、最終日には、京都府立医科大学の夜久均学長より、豊かな長寿社会のために日々の生活で心がけることを盛り込んだ「世界長寿サミット宣言」が発表されました。
【世界長寿サミット宣言】
- Kizuna
絆を育み、コミュニケーションを絶やさないこと。 - Dietary fiber
植物性たんぱく質や食物繊維の豊富な食事を、仲間と共に楽しむこと。 - Physical activity
規則正しい生活と運動習慣を日々の暮らしに取り入れること。 - Ikigai
感謝の心をもち、生きがいを感じる毎日を大切にすること。

内藤先生は、研究の今後の展望について、コホート研究としての成果はこれから出てくるとしたうえで、まずは5年間の変化、10年間の変化を縦断的に研究し成果を発表することが重要だといいます。研究から得られた知見が日々の生活に活かされるとともに、世界長寿宣言にも謳われている絆やコミュニケーション、生きがいなどを大切にしていくことが、心身ともに健やかな“健康長寿社会”につながっていくのでしょう。
京都府立医科大学 大学院医学研究科 教授 内藤 裕二(ないとう ゆうじ) 先生
1983年 京都府立医科大学卒業
2001年 米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授
2005年 年独立行政法人科学技術振興機構科学技術振興調整費研究領域主幹
2009年 京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授
2015年 京都府立医科大学附属病院内視鏡・超音波診療部部長
2021年 京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座 教授、現在に至る
日本ガットフレイル会議理事長、日本抗加齢医学会理事、農林水産省技術会議委員、2025年大阪・関西万博大阪パビリオンアドバイザー。2024年、第23回杉田玄白賞(小浜市)受賞。
【第72回日本栄養改善学会学術総会
ランチョンセミナーのお知らせ】
令和7年9月12日(金)~14日(日)、東京農業大学世田谷キャンパスにて第72回日本栄養改善学会学術総会が開催されます。当財団は、この学術総会に参加される方を対象としたランチョンセミナーを9月13日(土)に実施します。講師には京都府立医科大学 教授の内藤裕二先生をお招きし、腸内細菌と健康長寿の関係について、内藤先生が手がけられる「京丹後長寿コホート研究」の成果を踏まえてご講演いただきます。
なお、ランチョンセミナーのご参加には学術総会への参加登録が必要です。詳細は第72回日本栄養改善学会学術総会のホームページをご覧ください。