健康・栄養に関する学術情報
睡眠の調節メカニズムと睡眠を制御する食品成分
適度の睡眠をとることは、私たちが健康で充実した生活を送る上で必要なことです。しかし、現代社会では夜型化が進み、睡眠時間が短くなっています。それに伴い居眠り事故や生産性の低下も起こり、睡眠障害による日本の経済的損失は年間3.5兆円と試算されています。また、子どもの健全な成育にも睡眠は大切で、ダノン健康栄養財団でも「早寝、早起き、朝ごはん」を訴えた食育事業を展開しています。
・食育事業
https://www.danone-institute.or.jp/n_education/
・食育情報サイト『ごはんだもん!げんきだもん!』
http://gohagen.jp/
「睡眠」とはどういう現象であり、どのように制御されているのかについての科学的な解明が進んでいます。現在では、睡眠を制御する2大因子として体内時計および脳内物質が重要であるとする「2プロセス説」が支持されています。後者は、例えば徹夜をした翌日は昼間でも眠くなったり、逆に昼寝をし過ぎると夜に寝付けなくなるなど、覚醒・睡眠により増減する物質が睡眠の制御に関与するというものです。その物質について現在まで数十種類が報告されていますが、有力なものとしてプロスタグランジンD2-アデノシン系があります。今回はその解明に携わった筆者による睡眠の調節メカニズムについての解説論文を紹介します。
睡眠の科学的評価法や人間の睡眠特性をはじめ、プロスタグランジンD2(PGD2)-アデノシン系を中心とした脳内での睡眠覚醒のメカニズム、さらには医薬品・食品成分による睡眠制御への関与など以下の項目について詳しく解説しています。
・日本人の眠りと睡眠研究における貢献
・脳波による睡眠判定と人間の睡眠特性
・PGD2とアデノシンによる睡眠覚醒調節機構
・PGD2-アデノシン系の生理的睡眠調節における重要性
・睡眠覚醒調節サプリメントの開発
・携帯型脳波計と睡眠の自己診断システムの開発
参考
裏出良博
「睡眠の調節メカニズムと睡眠を制御する食品成分」
化学と生物 Vol. 51, No.11 : 754-762, 2013
本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/51/11/51_754/_pdf