シンポジウム1

14takano座長 
公益財団法人ダノン健康栄養財団
専務理事
髙野 俊明


14sakane1.「糖尿病と栄養」

独立行政法人国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター
予防医学研究室長
坂根 直樹先生

●はじめに 糖尿病の増加と糖尿病予防研究

 日本人は糖尿病になりやすい民族ではないかと言われています。わが国でも食生活やライフスタイルの近代化と高齢化に伴い、糖尿病を持つ人が増えてきています。現在、日本の糖尿病人口は世界第6位で、その予防や糖尿病関連合併症予防対策が急務とされています。疫学研究からは、体重増加(特に、肥満)、脂肪(特に、飽和脂肪酸)、高グライセミック指数(GI)食品、白米の過剰摂 取や過度の飲酒をしている人は糖尿病になりやすいことがわかっています。逆に、食物繊維や魚をよく食べる人はや糖尿病になりにくいこともわかっています。欧米の研究では、肥満を伴う糖尿病のハイリスク者に対し、低脂肪による 食事と運動習慣の獲得により5-7%の減量に成功することで糖尿病発症率は半減以下になることも報告されています。日本人を対象とした我々の研究(日本糖尿病予防プログラム:JDPP)では、BMI23kg/m2以上の人が2kg程度の減量と余暇に身体を動かすことで、欧米での成績とほぼ同程度の効果が得られることがわかりました。

●行動科学やエビデンスを用いた食事指導

 過体重や肥満を伴う場合には、朝晩に体重を測定するなどのセルフモニタリングが減量を促進します。また、最近の研究では食前に水を十分にとることで食欲抑制効果だけでなく、水誘発性熱産生が起こり、減量に有利に働くこともわかっています。食物繊維がたっぷり入った野菜をごはんより先に食べることで食後血糖上昇を抑えます。急激な減量は体脂肪だけでなく、筋肉や骨を減少させ、リバウンドの際には主に体脂肪が増えます。乳製品などのカルシウムが減量に伴う代謝低下を防ぎ、腸内細菌叢の変化にも注目が集まっています。また、つい食べてしまう人などに対しては刺激統制法などが有効です。

●古くて新しい糖尿病の食事療法

 一方、欧米では糖尿病の食事療法として、カロリー教育というよりも糖尿病患者向けのプレート、ピラミッド、カーボカウント、手ばかりなどが用いられています。日本では食品交換表、食事バランスガイド、フードピラミッド、手ばかりなどが糖尿病を持つ人に合わせて用いられてきました。最近では、炭水化物(糖質)をカウント(数える)するカーボカウントが糖尿病食事療法のひとつとして用いられるようになってきました。炭水化物をとると、ほぼ100% が血糖に変換されます。1型糖尿病を持つ人では食べる炭水化物の量に合わせて、インスリン量を調節することで食事満足度など食事のQOLが改善することも報告されています。何よりも、家族や友人と楽しく食事ができることがよいと言われます。しかし、中には、血糖を上げたくないと極端な糖質制限に取り組む人がいます。1型糖尿病の人が極端な糖質制限を行うと、無自覚低血糖を頻発したり、ケトアシドーシスに陥る危険性が高まります。また、動物性たんぱく質などのおかずが増えすぎると、2型糖尿病・心血管疾患やがんになるリスクが高まることも報告されています。適正な炭水化物量や良質なたんぱく質をしっかりと摂ることが大切かもしれません。

●おわりに

 このように、糖尿病を予防したり、治療するための食事療法は続けることができなければあまり意味がありません。結局は、自分に合った食事療法をみつけることが大切です。自己流でやらずに、かかりつけの先生や管理栄養士さんに気軽に相談してみて下さい。現在、我々の研究室ではリバウンド予防研究に取り組んでおり、リバウンドしやすい人・しにくい人の要因を探っています。本講演では、楽しく続けられる糖尿病の食事療法のコツなどについてご紹介できればと思います。

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