講演1

座長
神奈川県立保健福祉大学 学長
中村 丁字


「成長期アスリートの食生活」 
立命館大学 スポーツ健康科学部 教授/管理栄養士/公認スポーツ栄養士 
海老 久美子
  

 
 アスリートの食事には、大きく分けて3つの意味がある。まず、コンディショニングのための食事である。食べることで日々のトレーニングに耐え、さらに進化する身体を作り、食べることで破壊された組織を修復し、疲労からの回復を早め、次のトレーニングに備えることが可能になる。2 つめは試合や競技に特化した能力を発揮するための食事である。作り上げてきた身体が秘めるパフォーマンスを本番で最大限に発揮するための食事が必要になる。3 つめは、スポーツに伴って生じやすいケガや故障の予防と改善のための食事である。骨折、捻挫、貧血、脱水など、激しい運動につきまとうアクシデントへの備えと、起きてしまった後の速やかな回復を目指すための食事である。
 しかしながら、成長期アスリートは「アスリート」である前に、「成長期」であることを優先しなければならない。成長期アスリートはスポーツをする「子ども」である。子どもは決して小さな大人ではない。また、女子選手は男子選手のミニチュアではない。それぞれの違いをしっかり理解していないジュニアのスポーツ現場では、様々な問題が生じやすい。特に第二次性徴期を迎える小学校高学年から中学生の時期は、心身共に様々な変化が生じ、個人内、個人間それぞれに差が生じやすい。同じ年齢であっても成長過程は人それぞれである。
 また、当然のことながら、スポーツ栄養も、毎日の「食事」を基本とする。食べることは、スポーツ以前に、生きるために絶対に必要なことであり、生活の一部であるとともに、人間の欲でもあり、快楽でもある。このことは、子どもでも例外ではなく、むしろ子どもだからこそ、かもしれない。
 児童文学には印象的な「食べ物」・「食べる事」が多く出てくる。その意味について『子どもの本と<食> 物語の新しい食べ方』(川端有子・西村醇子編)の冒頭に「<食>は、モラル、エコロジー、身体論、セクシュアリティ、コミュニケーション、カルチュラル、アイデンティティ、家族のありかたなどの問題を、子どもたちにとって最も身近なかたちで表象する。そしてその表象が、その時々の文化や社会を色濃く反映していることを思うと、<食>は、児童文学の本質に迫る上でも、また子どもたちをめぐる諸問題を考える上でも格好の題材なのである。」とあるのを目にした。スポーツをしている子ども達の<食>を考える上でも意味深い。
 今回は、これらの視点を含め、成長期アスリートの事例をいくつか紹介し、スポーツをする子どもの健康と能力アップにつながる食生活を考える。

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