講演3

座長
新百合ヶ丘総合病院 消化器・肝臓病研究所 所長
井廻 道夫


「脂質栄養の価値~理想的な脂質栄養とは?~」
自治医科大学 内科学講座・糖尿病センター 内分泌代謝学部門 教授
石橋 俊



 脂質は三大栄養素(PFC)のひとつであり、中性脂肪、リン脂質、コレステロールがある。栄養素 としては、脂肪酸とコレステロールが主要な成分であり、脂溶性ビタミン(A,D,E,K)も脂質栄養に 付随する重要な特性となる。 脂肪酸は炭素数4~36 の炭化水素鎖の末端にカルボキシル基を有し、炭素間に二重結合のない飽和 脂肪酸(SFA)、二重結合が1 個の一価不飽和脂肪酸(MUFA)、2 個以上の多価不飽和脂肪酸(PUFA) に分類される。PUFA は更に、二重結合がメチル基末端から6 番目のn-6 系PUFA と3 番目のn-3 系PUFA に分類できる。また、MUFA とPUFA の二重結合は通常シス型で、トランス型は自然界に もあるが、大半は工業的に生成される。 トランス脂肪酸の摂取過剰はLDL コレステロール値(LDL-C)の増加を招き、動脈硬化性心血管 イベントのリスクとなるため、WHO 含め多くの国で摂取量は総エネルギー摂取量の1%未満と制限 されている。 SFA は体内合成が可能であり、必須脂肪酸ではない。摂取量とLDL-C との間に正相関があり、Keys の式、Hegsted の式として知られている。炭素数の少ない(12~16)SFA はLDL-C 増加作用がある が、炭素数18 のSFA はLDL-C 増加作用がない。Seven countries study で冠動脈疾患死亡との関係 が注目されたSFA 摂取量であるが、近年のメタ解析では必ずしも冠動脈疾患との関係が明らかでは ない。ただし、SFA のPUFA 等への置換には冠動脈疾患の抑制効果が証明されている。 n-6 系PUFA は冠動脈疾患予防の可能性がある。n-3 系PUFA にも冠動脈疾患予防が観察疫学研究 から示されている。EPA を投与したJELIS やREDUCE-IT trial では冠動脈疾患予防抑制効果が証 明され、EPA とDHA を共に投与したORIGIN やSTRENGTH trial では冠動脈疾患予防は証明され ていない。SFA からPUFA への置換には冠動脈疾患の抑制効果があり、その効果はn-3 系PUFA が n-6 系PUFA やMUFA よりも大きい。n-3 系PUFA には認知症予防効果も示唆されている。 コレステロール摂取量とLDL-C との間に正相関があるが、冠動脈疾患との関連に関しては否定的な 研究結果が多い。一方、糖尿病集団では肯定的な結果も報告されていることを念頭におく必要がある。 

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