メールマガジン「Nutrition News」 Vol.116
2012年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
新生児期消化管における粘膜免疫の発達とprobioticsが与える効果の検討
順天堂大学医学部小児科 

大塚 宜一 先生
 食物の消化活動をつかさどる小腸は、新生児期に約270cm を有し、生後急速に成長し4 歳までに全長約450~550cm と成人の長さに達します。小腸粘膜には多数のリンパ球が存在することから、小腸が免疫臓器であることが知られています。消化管粘膜の表面は円柱上皮細胞で覆われており、腸内細菌叢の助けをかり、上皮細胞は消化管粘膜の防御能を高めたり、炎症性腸疾患においては炎症性ケモカインを産生して粘膜内リンパ球を刺激し粘膜障害を誘導したりと多彩な役割を演じています。また、Toll like receptor(TLR)の解析が進み、腸内細菌叢とのクロストークの解析が進められています。特に、胎児期の腸管は無菌状態であることから、新生児期・乳児期から小児期にかけ、腸内細菌叢の変化にともない、粘膜免疫機能にダイナミックな変化が起こっていると考えられますが、十分な検討はなされていません。
 一方、粘膜上皮細胞の機能と栄養との関わりが指摘されています。Probiotics は、炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患の予防や治療に利用されるようになっていますが、その新生児期における役割や分子生物学的な検討も十分にはなされていません。
 そこで本研究では、まず仔ラットの腸管における各種シグナル分子の発現を検討し、ついで、その系を用いProbiotics の粘膜免疫に与える影響を比較検討しました。
 

要旨

背景:胎児期の腸管は無菌状態であることから、出生後の腸内細菌叢の変化にともない、新生児期・乳児期から小児期にかけ、粘膜免疫機能にダイナミックな変化が起こっている。そこで出生直後および離乳期の仔ラットを対象に、Probiotics を投与した群とそうでない群の腸管粘膜における免疫関連分子の発現をmicroarray、RT-PCR、免疫組織染色を用い比較検討した。 方法:出生直後および出生後21 日の離乳期の仔ラットを対象に、呼吸および体温など全身管理を行いつつ、腸内細菌叢の検討、免疫・分子生物学的解析、組織学的検討を行った。さらに、B. breve 5×108 cfu/日を投与した際の影響を解析した。

結果:仔ラットにB. breve を投与したところBifidobacterium の割合の増加を認めた一方、Bacteroidesの割合の抑制を認めた。Microarray およびRT-PCR を用いた炎症性シグナル分子の発現については、新生児期の仔ラットにB. breve を投与した際、glutathione peroxidase 2、lipopolysaccharide binding protein、lipoprotein lipase などの炎症関連分子の発現の抑制を確認し、その抗炎症効果が示唆された。
一方、離乳期では、CD3 の発現亢進を認めるものの、co-stimulatory molecules の発現には変化を認めなかった。さらに、リンパ濾胞の増殖因子であるCXCL13 などの発現亢進及び組織におけるIgA 産生の亢進を認め、免疫寛容の誘導により適した環境が誘導されていることが示唆された。

考案:以上より、B. breve を投与することで、新生児期より認める炎症性シグナル分子の発現を抑える一方、経口免疫寛容の誘導にも効果がある可能性が示唆された。

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