メールマガジン「Nutrition News」 Vol.75
トピックス「『健康日本21』最終評価」
「健康日本21」最終評価

厚生労働省は平成23年10月13日、「健康日本21」の最終評価について公表しました。健康日本21は、健康寿命の延伸および生活の質の向上を目的として、生活習慣改善などに関する目標を設定し、国民が一体となって取り組む健康づくり運動です。


運動期間は成12年度から平成24年度までとなっており、今回とりまとめられた最終評価は、平成25年度以降の運動の推進に反映されることとされています。

国民健康づくり運動「健康日本21」

「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」は、すべての国民が健やかで、心豊かに生活できる活力ある社会とするための国民健康づくり運動として、平成12年に策定されました。策定の背景には、日本の疾病構造の変化があります。急速な高齢化や生活習慣の変化により、疾病全体に占めるがん、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病の割合が増加し、これらの生活習慣病にかかる医療費の国民医療費に占める割合は約3割となっています。
  
健康寿命を延ばし、生活の質を向上させることなどの実現に向けて、健康日本21では「栄養・食生活」「身体活動・運動」「休養・こころの健康づくり」「たばこ」「アルコール」「歯の健康」「糖尿病」「循環器病」「がん」の9つの分野について、80項目(参考指標1項目、再掲21項目を含む)の具体的な目標が設定されています。「栄養・食生活」の分野では、栄養状態をより良くするための「栄養状態、栄養素(食物)摂取」、適正な栄養素(食物)摂取のための「知識・態度・行動」、行動変容を支援するための「環境」の3つの観点から、15項目の目標が設定されました(内1項目は中間評価で追加)。
 
これらに関連して、食生活指針や食事バランスガイドの策定や普及啓発、「日本人の食事摂取基準」の策定、特定健康診査・特定保健指導の実施、食育の推進(食育基本法の施行、食育基本計画の策定)など、様々な施策が行われてきました。

目標の達成状況と今後の課題

健康日本21の運動期間は平成12年度から平成24年度までであり、平成22年度から最終評価を行い、その評価を平成25年度以降の運動の推進に反映させることとされています。平成23年3月から「健康日本21評価作業チーム」(座長:辻一郎東北大学大学院教授)が開催され、各目標の達成状況や、関連する取り組みの状況の評価などが行われてきました。各指標の評価にあたっては、設定時の値と直近の値を比較するとともに、分析上の課題や関連する調査・研究データの動向も踏まえ、目標に対する達成状況について次のように分類しています。

A:目標値に達した
B:目標値に達していないが、改善傾向にある
C:変わらない
D:悪化している
E:評価困難(中間評価時に新たに設定した指標である、または把握方法が異なるなど)

全体の目標達成状況  

9分野の全指標80項目のうち、再掲21項目を除く59項目の達成状況は表1の通りです。

表1 全体の目標達成状況

評価区分(策定時※の値と直近値を比較)該当項目数(割合)
A 目標値に達した 10項目(16.9%)
B 目標値に達していないが改善傾向にある 25項目(42.4%)
C 変わらない 14項目(23.7%)
D 悪化している 9項目(15.3%)
E 評価困難 1項目(1.7%)

※中間評価時に設定された指標は、中間評価時の値と比較
(「健康日本21」最終評価より)

 各評価に該当する主な項目

A:高齢者で外出について積極的態度をもつ人の増加、80歳で20歯以上・60歳で24歯以上の自分の歯を有する人の増加など

B:意識的に運動を心がけている人の増加、禁煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及、糖尿病やがん検診の促進など

C:自殺者の減少、多量の飲酒する人の減少、メタボリックシンドロームの該当者・予備群の減少、高脂血症の減少など

D:日常生活における歩数の増加、糖尿病合併症の減少など

E:健診・保健指導の受診者数の向上(平成20年からの2か年のデータに限定されるため)  

健康日本21において定められた目標全体では、A「目標値に達した」とB「目標値に達していないが改善傾向にある」を合わせて、全体の約6割で一定の改善が見られました。

栄養・食生活における目標達成状況

栄養・食生活の各目標の達成状況と評価を表2に示しました。栄養状態、栄養素(食物)摂取に関する項目では、女性(40~60歳代)の肥満や食塩摂取量には改善が見られましたが、脂肪エネルギー比率や野菜の摂取量などについては、改善が見られませんでした。  

知識・態度・行動については、自分の適正体重を維持することのできる食事量を理解している人の割合や、メタボリックシンドロームを認知している割合など、知識・態度のレベルでの改善は見られたものの、朝食欠食については「悪化している」と評価されるなど、行動の変容にまでは至らなかったものもありました。  

行動変容のための環境づくりについては、ヘルシーメニューの提供や学習・活動への参加について改善が見られました。  

肥満の予防・改善については運動、朝食欠食の改善については休養(生活リズム)と連動する必要があり、個人の生活習慣全体を包括的に捉えた新たなアプローチとともに、子どもの頃から望ましい生活習慣を身につけさせることが重要です。また、食塩摂取量の減少など、個人の努力だけではこれ以上の改善が困難なものについては、栄養成分表示の義務化や市販食品の減塩など企業努力を促す環境介入の必要性も指摘されています。  

なお、メタボリックシンドロームについては、第2次食育推進基本計画において「予防や改善のための適切な食事、運動等を継続的に実践している国民の割合の増加(現状値:41.5%→目標値:50%以上)」が新たな目標として設定されています。

表2  栄養・食生活の各目標の達成状況と評価

目標項目目標値

ベースライン値直近実績値有意差評価
適正体重を維持している人の増加


児童・生徒の肥満児  7%以下 10.7% 9.2% 有意差なし C
20歳代女性のやせの者 15%以下 23.3% 22.3% 有意差なし
20~60歳代男性の肥満者 15%以下 24.3% 31.7% 有意に増加
40から60歳代女性の肥満者 20%以下 25.2% 21.8% 有意に減少
脂肪エネルギー比率の減少 20~40歳代(1日あたり) 25%以下 27.1% 27.1% 有意差なし C
食塩摂取量の減少 成人(1日あたり) 10g未満 13.5g 10.7g 有意に減少 B
野菜の摂取量の増加 成人(1日あたり) 350g以上 292g 295g 有意差なし C
カルシウムに富む食品の摂取量の増加 牛乳・乳製品(1日あたり) 130g以上 107g 91g 有意に減少 D
豆類(1日あたり) 100g以上 76g 59g 有意に減少
緑黄色野菜(1日あたり) 120g以上 98g 99g 有意差なし
自分の適正体重を認識し、体重コントロールを実践する人の増加 男性(15歳以上) 90%以上 62.6% 67.7% 有意に増加 C
女性(15歳以上) 90%以上 80.1% 76.3% 有意に減少
朝食を欠食する人の減少 中学生、高校生 0% 6.0% 7.2% 有意差なし D
男性(20歳代) 15%以下 32.9% 33.0% 有意差なし
男性(30歳代) 15%以下 20.5% 29.2% 有意に増加
量、質ともに、きちんとした食事をする人の増加 成人 70%以上 56.3% 65.7% 有意に増加 B
外食や食品を購入する時に栄養成分表示を参考にする人の増加 男性(20~69歳) 30%以上 20.1% 25.0% 有意に増加 B
女性(20~69歳) 55%以上 41.0% 55.3% 有意に増加
自分の適性体重を維持することのできる食事量を理解している人の増加 成人男性 80%以上

65.6%
(参考値)

75.0% 有意に増加

B

 

成人女性 80%以上 73.0%

(参考値)
78.2% 有意に増加
自分の食生活に問題があると思う人のうち、食生活の改善意欲のある人の増加 成人男性 80%以上 55.6% 58.8% 有意差なし C
成人女性 80%以上 67.7% 69.5% 有意差なし
ヘルシーメニューの提供の増加と利用の促進 男性(20~59歳) 50%以上 34.4% 38.8% 有意に増加 B

女性(20~59歳)

50%以上 43.0% 61.9% 有意に増加
学習の場の増加と参加の促進 男性(20歳以上) 10%以上 6.1% 8.3% 有意に増加 C
女性(20歳以上) 30%以上 14.7% 16.1% 有意差なし
学習や活動の自主グループの増加 男性(20歳以上)  5%以上 2.4% 3.9% 有意に増加 C
女性(20歳以上) 15%以上 7.8% 8.4% 有意差なし
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を認知している国民の割合の増加 20歳以上 80%以上 92.7% A

(「健康日本21」最終評価をもとに作成)

次期国民健康づくり運動に向けて  

健康日本21評価作業チームは、次期国民健康づくり運動の方針を検討する上で、

①日本の特徴を踏まえ10年後を見据えた計画の策定
②目指す姿の明確化と目標達成へのインセンティブを与える仕組みづくり
③自治体等関係機関が自ら進行管理できる目標の設定
④国民運動に値する広報戦略の強化
⑤新たな理念と発想の転換

の5つの視点が重要であると指摘しています。

これらを踏まえた次期運動の方向性として、家族・地域の絆の再構築、貧困など様々な生活条件への配慮や健康格差の縮小など、社会経済の変化へ対応することや、科学技術の進歩を踏まえ、エビデンスに基づいた目標設定などの効果的なアプローチを行うことが示されています。具体的な課題として、働く世代のうつ病の対策、将来的な生活習慣病発症の予防のための取り組みの推進(子どもへの健全な食生活や活発な身体活動の実践強化など)、生活習慣に起因する要介護状態の予防などが挙げられています。

参考

・「健康日本21」最終評価の公表(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001r5gc.html

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