メールマガジン「Nutrition News」 Vol.48
トピックス「学校給食法改正」
学校給食法改正

学校給食の歴史

学校給食は、明治22年、山形県鶴岡町(現鶴岡市)の私立忠愛小学校で、貧困家庭の児童を対象におにぎりや焼き魚などの昼食を提供したのが始まりであるといわれています。

学校給食は戦争により一時中断されましたが、昭和21年、文部・厚生・農林三省次官通知により、戦後の学校給食の方針が定まり、LARA(Licensed Agencies for Relief in Asia:アジア救済公認団体)より脱脂粉乳などの援助物資を受けて再開されました。昭和25年には、アメリカより寄贈された小麦粉により、パン・おかず・ミルクからなる完全給食が実施されました。

昭和26年、日本と連合諸国との間で結ばれた平和条約(サンフランシスコ講和条約)によって第二次世界大戦が終結しました。

それに伴って、当時の学校給食の財源となっていたガリオア資金も打ち切られると、各地で学校給食費は値上がりし、学校給食を中止する学校や、給食費未納者の増加などが見られるようになりました。

このような背景を受け、国庫補助による学校給食継続や学校給食の法制化への要望が高まり、昭和29年、学校給食法が制定されました。

初めての大幅改正

学校給食法が制定された当時、日本は戦後の食料難の最中にあったため、学校給食は、児童・生徒の栄養改善を主な目的としていました。

しかし、戦後の日本経済が目覚ましい発展を遂げ、食をとりまく環境も大きく変化しました。食料事情が改善された一方で、不規則な食事や栄養のアンバランス、生活習慣病の増加などの新たな問題が生じてきました。これらの解決のため、「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得する「食育」の重要性が叫ばれるようになり、平成17年に食育基本法が制定され、また同じ年に栄養教諭制度が開始されました。

学校給食法も現状に見合った内容に改正する必要が指摘され、平成21年、学校給食法は施行以来、初めての大幅な改正に至ったのです。

主な改正点

法の目的と学校給食の目標

改正学校給食法において学校給食は、児童及び生徒の心身の健全な発達に資するだけでなく、「食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすもの」と位置づけられ、その目的に「学校における食育の推進を図ること」と明記されました。


また、学校給食の目標についても、食育の観点から「適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること」や「我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること」など、「食」に関する様々な事柄について学ぶための項目が新設されるなどしています (表1)。

表1 学校給食の目標(学校給食法第二条)

改正前改正後
(新設)
適切な栄養の摂取による健康の保持促進を図ること。
日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと。
日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと。
学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
(新設)
食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
(新設)
食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
(新設)
我が国や各地域の優れた伝統的な食文化について理解を深めること。
食生活の合理化、栄養の改善及び健康の増進を図ること。 (削除)
食糧の生産、配分及び消費について、正しい理解に導くこと。
食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。

栄養教諭の役割

学校における食育の中核を担うのが栄養教諭です。改正学校給食法には、栄養教諭の行うべき指導として、食品と健康の保持増進との関連性についての指導をすること、食に関して特別の配慮を必要とする児童・生徒に対しては個別に指導すること、学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うことが挙げられています。

また、それらの指導を行うにあたっては、「当該義務教育諸学校が所在する地域の産物を学校給食に活用することその他の創意工夫を地域の実情に応じて行い、当該地域の食文化、食に係る産業又は自然環境の恵沢に対する児童又は生徒の理解の増進を図るよう努めるものとする。」とされており、地産地消の概念も盛り込まれています。

その他、学校給食の実施回数や栄養量等について定めた「学校給食実施基準」や、学校給食の施設や設備、衛生管理について定めた「学校給食衛生管理基準」についても法制化されました。

学校における食育は、栄養教諭だけでなく、全教職員の共通理解のもとで行うことが重要です。関係者の連携のもと、学校給食が単なる食事の場ではなく、児童・生徒が自ら健全な食生活を営むことができる知識や態度を養うための「生きた教材」として活用されることが望まれています。

参考

学校保健法等の一部を改正する法律(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/ 08040703/gakkouhoken.htm

平成20年版食育白書(内閣府)
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/data/whitepaper/2008/ book/index.html

学校給食の歴史(独立行政法人日本スポーツ振興センター)
http://www.naash.go.jp/kenko/siryou/history/history.html

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