メールマガジン「Nutrition News」 Vol.131
健康・栄養に関する学術情報

成人における経済的要因と食に関する認知的要因,食行動,および食のQOL との関連
   望ましい栄養状態と良好な食生活は健康維持に必要なものですが、その実現にむけては効果的な栄養教育が求められます。栄養教育は食行動の変容を目標としていますが,望ましい行動変容を促すには認知的要因だけでなく,所得,教育,就業などの社会経済的要因にも対策を講じることが課題となっています。社会経済的要因と栄養・食物摂取状況との関連については,近年多くの研究で報告されており、家計消費金額と栄養バランスの良い食生活との関連性も報告されています。しかし、栄養・食物摂取状況に影響を及ぼす食に関する知識や態度などの認知的要因や食行動が,世帯の経済状態とどのように関連しているかは明らかになっていませんでした。今回は、内閣府が実施した全国規模データを用いて,成人を対象に,経済的要因と食に関する認知的要因(食知識,食態度),食行動,及び食のQOL との関連について解析した論文を紹介します。
 
(内容)
   国平成23年「食育に関する意識調査」(内閣府)のデータを用い,満20歳以上の層化無作為抽出された男女3,000名のうち,回答が得られ不備のなかった者1,522名(男性706名,女性816名)を分析対象者とした。経済的要因として世帯の年間収入(200万円未満,200~600万円,600万円以上)と主観的な暮らし向き(ゆとりなし,どちらでもない,ゆとりあり)を独立変数,食に関する認知的要因など計9 項目(35指標)を従属変数とし,性別などを共変量とした多重ロジスティック回帰分析を行った。
  その結果、食品選択で重視する要因では,“200万円未満”や“ゆとりなし”は,“600万円以上”や“ゆとりあり”に比べて,価格や量・大きさのオッズ比が有意に高く,おいしさや産地,栄養価などは有意に低かった。また,今後身に付けたい知識では食費を節約する料理の作り方のオッズ比が有意に高く,健康に配慮した料理の作り方などは有意に低かった。さらに,朝食などの食行動は,世帯の年間収入ではなく,主観的な暮らし向きとの間に有意な関連を示した。
  結論として、経済的要因,特に主観的な暮らし向きは,栄養教育の対象となる知識や態度などの認知的要因や食行動,食のQOL と関連していることが示唆された。

 参考

  
詳細は下記論文をご参照下さい。
 
林 芙美,武見 ゆかり,村山 伸子
「成人における経済的要因と食に関する認知的要因,食行動,および食のQOL との関連」
栄養学雑誌,Vol.73 No.2 51-61(2015)
 
本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/73/2/73_51/_pdf
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