メールマガジン「Nutrition News」 Vol.128
健康・栄養に関する学術情報

地域在住高齢者における短鎖および中鎖脂肪酸摂取が8年間の認知機能得点低下に及ぼす影響
 
  認知症の発症は年齢が高くなるにつれて増えるので、超高齢社会を迎えた日本では患者数の増加が大きな問題となっています。認知症にはいくつかの種類がありますが、このうち60%がアルツハイマー型、20%が脳血管型とされています。認知症の発症頻度と生活習慣病との関連が指摘され、糖尿病患者でアルツハイマー型認知症の、高血圧症で脳血管型認知症の発症が増えることが明らかとされています。認知症予防にはバランスのとれた食習慣と適度な運動、活発な精神活動をいつまでも維持することが薦められていますが、食事との関連では塩分摂取を控えることや、抗酸化成分を多く摂取すること、脂質ではn-3系不飽和脂肪酸(EPA, DHAなど)の摂取が薦められています。また、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸と認知機能との関連も注目を集めています。
  炭素数6以下の短鎖脂肪酸や炭素数8-10の中鎖脂肪酸は乳製品やある種の植物油(ココナツオイル等)に多く含まれます。また、短鎖脂肪酸は、腸内細菌により食物繊維から腸内でも生成されます。短鎖・中鎖脂肪酸は通常の食用油の主成分である長鎖脂肪酸に比べ短時間でエネルギーとして分解されます。また、脳のエネルギー源として使われるケトン体を効率的に生成することから、認知機能との関連についても検討されています。
  今回は、高齢者の疫学調査を行い、短鎖・中鎖脂肪酸摂取量と認知機能の経時的低下リスクとの関連を調べた研究報告論文を紹介します。
 
 
(内容)
   「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究」で第2次調査に参加した愛知県地域住民のうち、60歳以上でありMini-Mental State Examination (MMSE: 0-30点)において28点以上の認知機能高得点者570人を対象にした。その後8年間にわたり認知機能検査を行い、その間の機能低下(27点以下)のリスクと、開始時に調査した食事調査(3日間食事秤量記録)から算出した栄養素摂取との関連について、一般化推定方程式により検討した。その結果、短鎖・中鎖脂肪酸量1SD上昇に伴う認知機能低下リスクのオッズ比は0.86および0.84と有意な低値を示した。これにより、短鎖および中鎖脂肪酸摂取は認知機能得点低下リスクを軽減しうる可能性が示唆された。

 参考

  
詳細は下記論文をご参照下さい。
 
大塚 礼ら
「地域在住高齢者における短鎖および中鎖脂肪酸摂取が8年間の認知機能得点低下に及ぼす影響」
日本栄養・食糧学会誌 68: 101-111,2015
 
本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/68/3/68_101/_pdf
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