メールマガジン「Nutrition News」 Vol.119
健康・栄養に関する学術情報

バクテロイデスと免疫
 
 ヒトの下部消化管には1g当り約1,000億個の腸内細菌が存在し、その大部分は酸素があると生育出来ない嫌気性菌です。優勢な菌群はFirmicutes門(Closotridium属など)、Bacteroidetes門(Bacteroides属など)、Actinobacteria門(Bifidobacterium属など)です。その中でBifidobacterium属細菌は健康との関連で注目され、多くの研究がなされてきました。一方、Bacteroides属細菌は日和見感染を起したりすることから、どちらかと言うと「悪玉菌」として考えられ、優勢に存在する常在菌としての機能についての研究はあまり成されてきませんでした。しかし、最近になり肥満者の腸内にはBacteroidetes門細菌が少ないことが報告されるなど、注目されつつあります。筆者らは無菌マウスに菌を定着させることにより、定着させた菌の働きを明らかにするノトバイオートという実験系を用いて、Bacteroides属細菌がマウスの免疫機能を成熟させる働きを持つことを明らかにしました。
 今回はBacteroides属細菌の腸内での働き、特に免疫系への影響について解説した論文を紹介します。

 腸内細菌は食餌成分の違いにより影響を受けますが、Bacteroides属細菌はオリゴ糖類をはじめとする難消化糖類を利用して生育出来ます。Bacteroides属細菌が増えたことにより健康を害するようなことがあまり多く認められず、実際にマウスに整腸効果を有するフルクトオリゴ糖を食べさせると、Bacteroides属細菌が増えることが認められます。
 ノトバイオートマウスを用いた試験においてBacteroides属細菌は小腸免疫器官であるパイエル板におけるIgA抗体の産生誘導能が、マウスでの優勢菌であるLacobacillus属細菌よりも強いことが認められました。また、Bacteroides属細菌を投与し定着させることで小腸や盲腸リンパ節の胚中心の形成を誘導するとともに、総IgA産生を増やすことも認められました。さらに、Bacteroides属細菌の菌体成分によるT細胞の活性化や炎症抑制も認められ、これらを通じて生体の生理機能にも大きな影響を与えていると考えられます。

 参考

  
 詳細は下記論文をご参照下さい。
 
 細野 朗
 「バクテロイデスと免疫」
 腸内細菌学雑誌 27:203-209, 2013
 
 本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/27/4/27_203/_pdf
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