講演3

16osaka nakamura座長 
神奈川県立保健福祉大学 学長
中村 丁次


16osaka uenishi3.「乳製品と骨の健康」

女子栄養大学 栄養生理学研究室 教授
上西 一弘

 

はじめに  

人生86年(日本人女性の平均寿命です)、健康で長生きしたいものです。私たちの「骨」は加齢とともにその密度が減少していきますが、願わくば最後までしっかりと身体を支えてほしいものです。本日の講演では「骨太人生」を目指すためにはどのようなことに気をつければよいのか、少しでも皆様の骨が健康であり続けますように、ライフスタイルのアドバイス、特に乳製品と骨の健康について話をさせていただければと思っています。  骨といえばカルシウムですが、カルシウムは吸収率が比較的低い栄養素です。牛乳・乳製品はカルシウムの供給源として非常に優れた食品のひとつです。骨ごと食べることのできる小魚や、緑黄色野菜もカルシウムの供給源としては優れています。牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜はカルシウム以外の様々な栄養素の供給源ともなります。

骨粗鬆症を知っていますか  

骨は成長期に大きさ、密度ともに増加し、18歳から30歳代にかけて最大の値となります。この値のことを「最大骨量」ともいいます。これは言い換えると、「骨の貯金」といえます。貯金は多ければ多いほど、老後も安心ですね。骨も同じです。若い時期にできるだけ骨を強くしておくことが、最も重要です。  成人期以降、骨は徐々に減少していきます。特に女性は閉経期に骨量は一段と減少します。これはそれまで骨を守ってくれていた、女性ホルモンが減少してしまうからです。骨量がある値、すなわち成人期の平均の70%を下回ると、「骨粗鬆症」となります。文字どおり、「骨」が「粗」く、「鬆(す)」が入ったようになってしまう病気です。骨粗鬆症自体は痛くも痒くもない病気ですが、これが原因で骨折が多くなってしまいます。骨折が原因で寝たきりになってしまうケースも多いのです。

カルシウムと骨の働き  

食事で摂取したカルシウムの消化管からの吸収率は25%程度です。成長期には高く、加齢とともに減少します。この吸収率、牛乳では約40%と高いことが知られています。小魚は33%、野菜は19%といデータもあります。でも、私たちはこれらの食品を単独で食べるわけではありません。いろいろな食材を食事として摂取すれば、カルシウムの吸収率も混ざってしまいます。この平均値が25%程度ということです。吸収されたカルシウムが骨に蓄積されるかどうかも重要です。骨は道路工事と同じように削っては埋めなおすという作業を毎日行っています。削る量が多いと骨量は減少します。 骨が強くなるためには、骨に刺激を与える必要があります。運動はその刺激となります。歩く、座った姿勢から立ち上がるなども骨への刺激となります。身体を動かすことがカルシウムの骨への蓄積に重要となります。

骨太人生を目指そう  

将来、骨粗鬆症で骨折しないためには、次の3つのポイントがあります。まずは、成長期に骨量を多くすること。これはバランスの良い食事と十分なカルシウム摂取、適度な運動、規則正しい睡眠が重要となります。  次に、女性の場合には妊娠・授乳期が骨量を増やすチャンスとなります。妊娠・授乳自体は母体の骨量を減らしてしまいますが、授乳終了後に母体の骨量は急速に回復することがわかってきました。この時期に十分なカルシウムを摂取すれば骨量を妊娠前よりも増やすことが可能です。  閉経期には骨量が大きく減少しますが、できるだけその減少を抑えることが大切です。ここでもバランスの良い食事と十分なカルシウム摂取、適度な運動がキーワードです。  高齢になってから、骨量を増やすことは食事や運動では困難です。できるだけ若い時期に骨量を測定してみて、自分の骨の状態を知っておくことも効果的です。機会があれば測定してみてください。

 

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